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「リフィ!どうだった!?」
イズ達の元からリフィが帰ってくると、使用人達が心配そうに声をかけてきた。
誰も自らの命を差し出すほどではないが、『悪女』に狙われたリフィを気にしてはいたのだ。
どの者の目もリフィを哀れんでいた。
「なんともなかったです」
リフィはいつもの笑顔を浮かべながら答える。
「よかった…なんとか罰は与えられなかったのね」
「それなりに人の心はあるのかもしれないな」
使用人達はそれぞれの解釈を口にする。
どの考えもイズが『悪女』だと頭から決めつけたものだった。
なぜかリフィには彼らが薄っぺらい人間に思えてきた。
「…奥様はそんな悪い方じゃないと思います」
なんだかなと思いながらリフィは彼らに言った。
ついさっきまで自分が彼らと同じであったことがまるで自分の汚点である様にも感じた。
「何言ってるの?」
「お前はまだここに来て日が浅いからな…」
誰もがまるでリフィを馬鹿にした様に言った。
確かにリフィはこの屋敷の中で一番年下の新人だ。
だからこそ彼らはまだリフィが未熟だとため息をつくのだ。
ーー私ってこんな風に見えていたのかな…
そんな彼らを見てリフィはなんとなく哀れむ目を向ける。
先程のイズを知ればそんなギスギスした考えすら馬鹿らしく感じられる。
イズはなぜか見ているだけでふわっと軽くなるのだ。
そんな事を考えていると、ローゲがやって来た。
「リフィ、奥様のお世話は君がしてくれ」
「え?私ですか?」
リフィが驚いてローゲに甲高い声で返す。
「奥様が君を気に入ったみたいだ」
ローゲは哀れむ目をリフィに向ける。
「なんだ、気に入られたのか」
「うまく取り入ったわね」
「気に入られたからって、あんな事を言ったのよ」
「まだ幼いから無害と思われたのかもね」
「よかったな」
反応はそれぞれだったが、リフィが手玉に取られている様な言い方をする者もいた。
中には本当に安心した様な様子の者もいたが、その空気感にリフィは違和感を覚える。
ーー別にみんな仲良しこよしって思った事はないけど…
生々しい現実を見た様な気分だった。
『悪女』の存在がそれをより鮮明にしているのかも知れない。
彼らの頭には先程までのリフィと同じ様にイズを最初から決めつけてしまっている。
だからそう思うのは分からないでもないが、どうにかイズについて知って欲しいと思う。
ーー奥様に気に入っていただけたのは嬉しいけど…
どうも居心地が悪い。
リフィはため息をつきながら、持ち場に向かおうした。
「リフィ」
すると突然、声をかけられた。
リフィが振り向くとそこにはティッタがいた。
どうやら先程の会話は聞いていない様だ。
「何?」
ティッタはこの屋敷の中で一番歳の近い下女だ。
とは言っても7歳は離れているが、この屋敷に仕えている期間も長い為、リフィは仕事のほとんどを彼女から学んでいる。
「その…奥様ってどんな方だった?」
ティッタは戸惑い気味に聞いてくる。
リフィはそう言えばと思い出す。
ーーあ…そっか、ティッタって…
リフィは他の使用人に『悪女』について散々聞かされた後、ティッタについても教えてもらった。
あまり深く関わらない方がいいと他の使用人達も言っていた。
あの話を聞く限り面倒毎に巻き込まれそうでその通りだなとリフィも納得していた。
ティッタ自身は優しく面倒見のいい性格をしており、悪口を言った姿もリフィは一度も見たことがない。
ーーだけどな…
リフィはあのことさえなければとため息をつく。
使用人達もティッタが悪い子でないのは知っているのでそれなりに付き合いをしているが、やはり距離を置いている。
正直、面倒だとリフィもそれなりの関係止まりだ。
「良い方だったよ」
リフィは思ったままのことをティッタに伝えた。
「そっか…」
ティッタの美しい顔が寂しげな表情を見せる。
リフィはそれに気がついていた為、余計複雑な心境になるのだった。




