あなたを檻にする
高級磁器は次々と弾けるように割れ、磨かれたマホガニーのサイドボードは電撃で真っ二つになった。アームチェアーの片方が電撃ではじけ飛んで壁に突き刺さり、御殿風の和洋折衷家具は次々と燃え弾けていく。
あぁ、僕のお気に入りの物たちが。
「やめて!絨毯だけは絶対にやめて!」
呉羽の犬神は一体のオコジョには有効だったが、団体の電撃を発する神獣にはなすすべもなく一瞬で消滅した。
それなのに、それでもオコジョが頑張っているのは、僕の命令を聞いてもくれないのは、僕の躾が悪かったからなのだろう。
ごめんなさい、葉子さん。
僕はオコジョが電撃の神獣だって今日の今まで知らなかったんです。
本当です。
ガシュッ!……ああ、ようやく収まった。
だが、これからもっと発動させる可能性がある。
「葉子さん、別室に早く逃げて。」
僕の言葉で僕の後ろで立ち尽くしていた葉子が、部屋の別の扉の方へと駆けていった。
「さぁ、お前をどうしようか。どこかに閉じ込めないと。」
倒れている呉羽の中にはまだあの悪霊がいる。
このままでは次々に乗り移るだろう。
僕の中に?入れてしまって大丈夫か?
ああ、良純和尚がいれば一瞬なのに、こんな化け物ぐらい。
呉羽は僕の思念を感じたか、取り憑かれていながらも僕を守ろうとした。
彼は朦朧としながらも拳銃に手を伸ばしたのだ。
自分自身に向けて自殺でもするつもりか!
「檻を!彼の体を檻にするよ!ダイゴ!ごめんなさい!」
ガガガガガガ!
再び室内は電撃が走り、細くて鋭い電撃の光が呉羽に注がれ、呉羽の肌に線引きされたような火傷をつご次と負わせていく。
悪霊をその身に縛り付けるために、網目の様な火傷を刻んでいるのだ。
彼は僕を守ろうと命を懸けているのに、僕は倒れた彼の全身に火傷の筋を負わせるだけで、彼の前に立ち竦むだけだしか出来ないとは。
「ごめんなさい。ダイゴ。痛いでしょう。苦しいでしょう。でも、僕はあなたを介抱出来ない。あなたに触れるとその悪霊が僕に入るから。良純さんが戻るまで、あなたを檻にしてしまった事を許してください。お願い、良純さんが戻るまで死なないで。」
何も出来ない癖に、僕は事態を悪くするだけの人間だ。
それなのに、呉羽は僕を見て微笑んだのだ。
大丈夫、という風に。
呉羽は駆けつけた救急隊員や葉子を警備している警察官達によって、病院に搬送しようと介抱され担架に乗せあげられている。
僕は僕を命がけで守ろうとした人間を、部屋の中で立ち尽くして眺めるだけだ。




