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個性の十面相

作者: 蒸し餃子

 まったくもってつまらないものである。

 

 世の中の大半は効率がいいからこそ出来ていて、そこには私を楽しませるものは何もない。

 しかし、かく言う私もまた、それを作り出す能力が無いのは周知の事実である。

 ここでは、そんな私の恥部を惜しまずに発散していこうと思う次第だ。

 君たちがこれを見てどんな感情を抱くかは知る由もないが、いつか私と出会ったとき、それがどの私か少し考えても見て欲しい。 


 時に、私の一人は園芸を嗜んだ。

 とある個性的で己の暇を破壊する。まるで破壊神のような男から、チランジアという植物を学んだらしい。

 すると、彼は自らの足で様々なチランジアの植物を購入した。


 ――――が、結局は買うだけ買い、あまり成長がはっきりと見えないチランジアの水やりだけはこまめにするだけで、彼らのあまり切った暇を潰しきるには、山に張り付く大木を切り倒すべく困難を迎えたようだ。

 今現在、彼の部屋は植物で溢れているが、それにあった金も同時に逃げていったと考えると、少々頭を抱える。 


 時に、私の中の男はネットから離れ、恋愛というものに手を出したそうである。

 先述した通り、暇つぶしから来る無力感から抜け出すため、異性の性情を煽り、利用することで、己の性情を満たすと同時に自由になろうとしたらしい。

 

 ――――が、いくつかの女に手を出しては、他の男の嫉妬に怯え、怒り、仕舞には恋愛のメリットを調べ、自分には必要なかったと投げ捨てたそうだ。

 しかし、この経験は彼にしてはよくやったほうだ。今まで周りには男しかいなかったため、彼は両親ともどもどころか、実の兄弟、親せき、赤の他人にまで同性愛者だと思われていたほどなのだから。


 時に、私にささやく男は読書にのめり込んだ。

 夏という清々しい名にあった恋の物語、同じ筆者の猫の話、星の男が書く短編の夢物語、龍の名の付く河童、とある海外筆者の1984――――と、様々な本を手にとっては、食すように知識を体内に入れたようだ。


 ――――が、彼はそのせいで貯金を使い果たし、最近はバイト先を探しているらしい。

 賢い私には、何故彼が図書館へ行かずわざわざ本を買ったりしたのかが分からなかった。ので、私は思い切って彼に質問を投げかけてみた。

 すると、彼は私の頭の中で笑い、面倒だろう。と言った。

 では、何故わざわざ本屋へ出向くようなことをするのか、今の時代はネットで購入ができる。やろうと思えば家から出ることもなく読書だってできよう。賢い君がそれに気づかないわけがない。そんな間違いをするわけがないだろう。

 私はもう一つ質問を投げた、彼はもう一度笑うと、面白いだろう。とだけ言った。

 やはり私にはそんな考えが分からなかったが、それもまた面白いと思ったとき、少しだけ分かった気がした。


 時に、運動が大好きな名もない男は、筋トレを始めた。

 風呂に入る前のランニング、入浴後のストレッチ。腕立てから腹筋にetc…

 また、彼はギャンブルも大好きだった。

 彼は友人間でギャンブルをすると、負けた者に罰ゲームとして筋トレをさせた。彼は、自分が筋トレをしている時は楽しいが、自分ではない誰かが筋トレをしているところを見るのは、異様に間抜けに見えて、また面白みがあるといった。


 ――――が、同時に彼はその楽しみを知ったせいで、他のことがよりつまらなく感じるようになったらしい。読書好きの賢い彼が言うに、幸福もまたストレスになる。それほど人は欲深い。だそうだ。

 このことは私にも衝撃だった。趣味を作り、それを応用してさらに楽しみを見出すのは彼の得意分野で、今回はそれが上手くはまり、成功したかのように見えた。

 しかし、その成功もまた彼らの暇を作り出したばかりであった――――となれば、私はどうすればいいのか分からない。

 

 時に、私という男は『なろう小説』という場所で、自分の娯楽のための文章をいくつか作り出したそうである。

 彼は一日に一筆を心掛け、自分の中の世界と倫理観を思うがままに描いたそうだ。

 

 ――――が、その全てが失敗に終わり、全てが完結することもなく、ただあの日見た青白い雲のように電子の海を漂うばかりなのは、もはや言うまでもない。

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