その7 「なんかココ魔界だって言ってるんだけど?」
違った、一角シベリアンハスキーこと、白狼族のランドルは・・・オレの後ろに隠れたのではなかった。
目の前のコウモリ娘・・・サキュバスっぽい女の子からオレをガードしていたのだ。
その証拠に――――。
「魔王さま! いつ復活されたのですか! なんかすんごい若返ってるんですけど!?」
と・・・、オレに向かって突進してきたソイツに、右前足を振り下ろした。
ぶんっ! ・・・と、斬撃が飛ぶかと思った。
「ひゃああ! ランドル、乱暴だよ!」
詰まる所・・・この子は力の加減ができないのかな?
「あ、いや・・・キミの方が乱暴なのでは? なんでさっきからオレに追撃を喰らわそうとしてんの?」
かなりカワイイ娘なのだが・・・ちょっと、勢いがあり過ぎて怖い・・・。
「ええ? 魔王さまはいつもがっしり私を受け止めてくれていたじゃないですか!!」
「あの? 魔王とか・・・だれ? オレ、さっきこっちに迷い込んだみたいで、状況がよく理解できないんだけど?」
「え?」
コウモリ娘は両肩を上げて、紫色に光る大きな瞳を更に開きながら、何度も瞬きをしていた。
「いや、だから・・・オレ、人間でさ、さっき地下鉄の階段から出たはずなんだけど、森のど真ん中に何故かいてさ、要するに迷子なんだけど? 魔王とかよく分からないんだけど?」
「人間・・・・・・・・確かに、魔王さまにそっくり・・・なだけ?」
「そっくり? オレが?」
魔王にそっくり? て、そりゃあ・・・大事件だヲ!!
「はあ・・・そう言えば、魔王さまはもっとがっしりしてた、こんなヒョロくない・・・」
「そうか、ヒョロいか・・・」
オレはこれでも日本国内では細マッチョの分類に入るのだがな?
身体を壊してから、運動は大事だと肝に銘じて軽いジョギングは毎日こなしているんだがな・・・主に、嫁に見捨てられないように。
「よく見ると、本物の魔王さまはもっと渋くてイケメンだった」
「いや、そこはオレの方が‟若い”って言ってよ!」
おまえのイケメンの基準はドコだよ!
「う~ん・・・魔王さまが勇者に倒されて、行方不明になっていたランドルがここにいるなら、アンタはそれなりの要素があるんだろうねぇ」
「要素?」
・・・て、今、勇者に倒されたって言った?
え? 聞き違いじゃないよね?
「・・・・・・・・・・・・」
いきなり黙るなよ、なんか怖いだろ。
「とりあえず、この世界が何なのか教えてくれないかな? オレ、右も左も分からなくて困ってるんだ」
「魔界だよ? ココ」
「はい? 魔界って・・・」
「人間界って分かる?」
「オレみたいな、翼とか尻尾もなくて魔法も使えない人間がいるところ?」
「ええ~? 人間の勇者一行は魔法バシバシ使えたよお?」
「いや、オレの世界では使えないのが一般的で、科学ってのが全てを解き明かしていたけど・・・」
「そっかあ、アンタは勇者のいる人間界から来た訳じゃなくって、本当に異なる世界から来たのね」
「はあ、ご理解頂けたようで助かります・・・本当に訳が分からない状態なので」
なんだこの世界は、魔界と人間界が同時に存在する世界なのか?
「う~ん・・・アタシも難しい事はわかんないんだよねぇ・・・とりあえず・・・魔王城、来る?」
なにその、“うち来る?”的なノリは――――。