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その4 「なんかスマホが水没したんだけど?」

 今の気持ちをツゲッタラーで呟くなら「悲報! スマホが逝きました!」・・・かも知れない・・・。

「だよねえ? 上着のポケットにスマホ入れたまま洗濯機に突っ込んだら、ふつう壊れるよねえ・・・」

 川原の石にオレは腰を下ろし、がっくりと肩を落とす。

 スマホの電源はウンともスンともしなかった。

 とりあえず、ダイバー向けの腕時計は無事であるのが唯一の救いだった。

 先ほどまで、川に沿って一角シベリアンハスキーの後を歩いていたが、いい加減疲れたので休憩を申し出た。

 やはり言葉が通じるようだ。

 腕時計は0時を指していた・・・。

「オレは眠いぞ! 犬!」

「・・・・・・・・・・・」

 ちっくしょー!

 チベットスナギツネのような乾いた視線を向けてくる、大型犬がここにいるよぉ!

 とりあえず手荷物の被害状況を確認するためにリュックを開いた。

「お・・・弁当・・・」

 偉いぞ! さすがオレの嫁!

 おにぎり・たくあん・唐揚げを見事にジップロックに入れてあるぞ!!

 紙類はヨレヨレとなっていたが、中身は一応乾いている。

 こりゃ・・・予備充電器もウォークマンもダメかな・・・。

 大きなため息をしつつ、無事だった保温ボトルのお茶で喉を潤した。

「ぷふぁー・・・生き返る」

 ジップロックから銀紙に包まれたおにぎりを出し、ほおばった。

 たくあんと唐揚げを交互に口に入れ、ボトルのお茶を飲む。

 二つ目のおにぎりの銀紙をはがしたところで、視線が刺さった。

 ビシッっと凛々しい顔をしながら、大きな尻尾が分かり易く揺れている。

「犬って・・・おにぎり食べられるのか?」

 一応おにぎりを二つに割り、中身を確認した。

 おかかなら大丈夫かな?

 気が付けば目と鼻の先に・・・立派な大型犬の鼻がくっつきそうに近づいていた。

 ばくり――――。

「!!!!!」

 腕を・・・食われるかと思ってヒヤッとした。

「おおおおい! まだ、いいとは・・・」

 とりあえず腕はちゃんと繋がっていて、胸を撫で下ろした。

 だが・・・ヤツは、おにぎりを美味そうに飲み込んだ後、ふんふんと嗅ぎつけた残りの唐揚げを襲った――――。

「オニ! アクマ! 唐揚げも二個しかなかったのにい!!!」

 オレのそうぼう目尻に涙が滲んでいたのは言うまでもない。


 飯を食ったら一休み・・・。

 適当な気の木陰に腰を下ろして、木の幹に身体を預けて眠る準備をした。

「ワオン?」

「寝るわ」

「ウオオン!?」

「うるさい、オマエみたいな魔獣のような(たぐい)と、人間の体力を比べるな」

「ワオワオワオワオオオンっ!」

「でなきゃ、力尽きて倒れるんだよ・・・軟弱優男のオレを過信するなよ? じゃあ、見張りよろしく!」

「ウオン・・・」

 結局、シベリアンハスキーの方が折れてくれた。

 木の根元で眠りこけるオレを包み込むように、大型犬は身体を丸めて座り込んだ。

 そうだ、オレは人(犬?)に甘えるのが上手い。

 自分の容姿を利用し、図々しく、人の優しさにつけこんで、そして許され続けて来た・・・根っからのタラシだ。

 そうやって生きて来たんだよ・・・文句あっか!

 柔らかな風が新緑の香りを運び、暖かな太陽が天上に浮かぶ・・・腕時計は午前1時を指していた。


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