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第四話 新生活


「玲音ちゃん、制服似合ってるわよぉ♪」


「あ、ありがとう」


 似合ってるか?

 俺に合うサイズがなくて、ちょっと所々パッツンパッツンなんだけど。

 引っ越しが終わった後は、父さんの事務所の場作りを手伝ったり俺の部屋を片付けたりしてなかなか忙しく、あっという間に入学式となった。

 これから都会で中学校生活が始まる。

 良い友人にも出会いたいし、出来れば彼女が欲しい!

 ……体型を何とかしないと出来なさそうだけど、ダイエットしようとすると母さんが必死になって止めてくる。

 デブ専、ここに極まれり。


「じゃ、いってきます」


「いってらっしゃい! 今日私は収録で入学式行けないけど、寂しがらないでね!」


「大丈夫だよ。代わりに父さんが来てくれるんでしょ?」


「そうよぉ。私の代わりなの……。恨めしい」


 恨めしいって……。

 ガチ泣きしそうな母さんをとりあえず放っておいて、俺は玄関を出た。

 すると玄関には一人の男が待っていた。


「よっす、家入。早く行こうぜ」


「うん。お待たせ、田中」


 この田中という奴は、お隣さんの息子だった。

 俺が町を散策している際、外国人に英語で道を訪ねられていて非常にテンパっていたので、俺が間に入って助けた。そこでお礼を言われて自己紹介もして少し仲良くなったので一緒に帰ったら、実はお隣だったという偶然な出会いだったんだ。

 フルネームは《田中 和也》。見た目通り活発的な男子で、サッカーに熱を入れている。

 ちょっと猫目で怖い印象もあるが、よく笑う奴で話してみると本当に良い性格をしているのがわかる。


「ってか、お前。随分制服ぱっつんぱっつんだな!」


「一番大きいサイズでこれしかなかったんだよ……」


「家入、悪い事は言わない。痩せれば?」


「……デブ専である母さんが、泣いてしがみついて止めろって言うんだ」


「……あんな美人なのに、残念だな」


「良い母親ではあるんだけどね」


 そう、良い母親なんだ。素晴らしい母親なんだ。

 でも頑なに俺を太らせようとする。そして父さんは止めてくれない。

 まぁそもそも母さんのご飯がとっても美味くて、食事制限出来ないってのもあるんだけど。


「とりあえず、同じクラスになったら宜しくな、家入」


「ああ。でもこういう時、変なフラグが立って別のクラスになるんだよな」


「ふらぐ? 何それ」


「まぁ、そういう風に言うと大抵反対の結果になるって事だよ」


「だったら最初からそう言えよ! 英語使われるとわかんねぇから!」


「……す、すまん」


 多分田中、勉強出来ないんだろうな。

 俺と初めて出会った時のこいつのテンパり様、涙目で目が泳いでたからなぁ。

 そんな俺はというと、読書好きというのもあってか上から数えた方が早い位だ。

 ちょっとした自慢でもある。

 

 こんな感じで雑談をしていると、徐々に人が多くなる。

 俺の通学路は、高校生達の通学路にもなっている。

 結構有名な進学校らしく、入試は相当難易度が高いらしい。

 

「おおう、一気に人が多くなったな」


 とは、田中の言葉。

 全くだと、俺も同意した。

 ふと、俺の嗅覚に懐かしい匂いがした。

 すごく安心できて、とっても心が暖かくなるような、そんな香りだ。


(……ん? 懐かしい? いや、今思えばそんな匂いは人間の時に嗅いだ事ないぞ?)


 そう、人間である今の生で、こんな安心できる匂いなんて嗅いだ事がない。

 じゃあ前世の時に嗅いだ事あるのか?

 俺は嗅覚に集中する。

 すると普段でも鋭い嗅覚が、さらに鋭さを増す。

 あからさまにクンクンすると変に思われるので、嗅覚がキャッチする匂いをしっかり分別する。

 だが、あの香りはしなかった。

 むしろ、近くにいた俺と同じ体型の男の臭いが強すぎて、集中が途切れるんだが!

 くそっ、あーっ、モヤモヤする!


「家入、どうした? そんな変な顔をしてさ」


「……いや、何でもない」


 すごく気になって仕方ないけど、入学式に遅れるのも問題だからとりあえず一旦記憶の片隅に置いておこう。

 同じ通学路なら、機会はこれだけじゃないと思うしな。

 俺と田中は、雑談をしながら学校に向かった。

 

 でも俺はこの時思いもしなかったんだ。

 まさか俺が、いじめの対象になるなんて。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!

ちょっとしばらく暗い話は続きます;

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