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9話

ここより前の話を一部修正。キャラクターの見た目が想像しやすくなるよう一部文章を修正しました。

 騎士団長に連れられること十数分。庵は聴取室にいた。ここに来る途中、騎士団長は住民から「また厄介ごとかい?」やら「またあの人か、災難だなぁ!」やら色々声をかけられていた。庵が連れられていることに関して特に何も思うことがないらしく、「またいつもの」といった感じだ。何度もこういうことがあってそれを住民も理解しているのだろう。



 「さて、イオリさん?これより聴取を始めます。と言っても大体のことはカイルから聞いていて裏も取れてるので報告書を書く為の形だけの聴取となります。気を楽にしていただいて構いませんよ。」



 そういってエインさんはにっこりと笑った。この人、笑った顔が殺人的なまでに魅力的だなぁ……と男の庵でさえ魅了する笑顔に戦慄しつつ体の力を抜き楽にした。

 するとエインの表情が笑顔から驚いたような表情へと変化した。



 「えっと、まずかったですかね…?」

 「いえ、この部屋に来た人で楽にしてくれと言われて本当にできた人が今までいなかったもので少々驚いてしまって……失礼かもしれませんが、もしかして慣れてるんですか?」




 慣れててたまるか。と言いそうになったところをギリギリで飲み込む。気を張るのは大事なことだが、無駄なとこで気を張るのはただただ気力を消費し、大事な所でミスを犯しやすくなる可能性が高い。そのことをよく理解している庵で、かつこの人は安全だと判断したからこそ気を抜くことができたのである。



 「あー……そんなに悪人に見えますかね?あんまりいい人相だとは思ってませんでしたが少し悲しいです……」



 と言いつつハンカチで目を抑え目に見えてわかる泣き真似をしてみせる。するとエインさんは愉快そうに笑った。



 「あはは、その度胸といい人当たりといい将来有望そうですね。今からコネを作っておきましょうか?」

 「いやいやただ馬鹿なだけですよ!それにコネを作るとすれば私の方です。経緯はどうあれ騎士団長様と知り合えるなんて幸運ですよ!」



 エインのいう冗談に対し庵はハハーとでも言いそうなほど大げさに腕を伸ばし頭を下げた。まぁ机があるので腕を伸ばしながら机に頭をこすりつけるという意味不明なカッコになっているわけだが。




 「面白い人ですね。これからも良い付き合いができそうです。……事件や厄介事を起こさなければ、ですけどね?」

 「はい、申し訳ありません以後気をつけますのでお許しを……」



 などという茶番も終わり、事情聴取が始まった。途中雑談を交わしつつ更にはお菓子なども出してくれたおかげで事情聴取とは思えないぐらい楽しい時間になっていた。



 「さて、こんな所でしょう。これにて聴取を終了とします。何か質問はありますか?」



 楽しい時間は早く終わるもので気づけば聴取が終わっていた。事情聴取が楽しいことなんて少し頭がおかしいと思うかもしれないがこれはもはや雑談をしていたといっても過言ではなかったので楽しくてもおかしくはないだろう。



 「いえ、特にはないです。この度はご迷惑をおかけしました……」

 「この時代にそこまで礼儀正しいのは珍しいですね。もしかして貴族出身だったりするのでしょうか?」

 「いえ、僕はただの平民ですよ。多分、ですけど。」



 元は勇者なので平民ではないのかもしれないが……それは向こうの話で今はただのオタクが異世界へ飛ばされたのと同じ状態だ。平民どころか愚民でもいいぐらいかも知れない。



 「そうですか…やはり将来有望そうですね。どうです?今度一緒に食事にでも?」

 「嬉しいお誘いですね。喜んで行かせていただきますよ。」

 「ふふ、今回だけはカイルに感謝しなければなりませんね……あなたとはいい付き合いができそうです。」



 そう言って手を差し出してきたので握り返す。本当にいい人だこの人は。これからお世話になるかもしれない。



 「それでは外までお送りしますよ。」

 「ありがとうございます。」



 そう言って庵はエインの後へ続く。そして部屋から出ようというところで丁度いいので気になることを質問してみた。




 「あ、そうだエインさん。このあたりにはエルフって多いのですか?僕エルフって初めて見たので色々な人に会ってみたくて……」




 そういうと扉に手をかけたエインの手が止まった。そしてその背中からはただならぬ気配を感じる。



 「あの?エインさ………ッ!」



 庵は咄嗟にその場をバックステップで離れた。そして先程までいた場所に、真っ赤な色の槍が突き立てられている。



 「その名を、どこで知った?答えろ。さもなくば、今すぐお前を殺す。」



 槍を構えているのはエインさんだ。だがその表情に先程までの優しい表情はない。鋭く射るような冷たい視線に加え抑えきれないほどの殺気。そして殺気だけで人を殺せそうなほどの威圧を放ちながらも意識をはっきりとさせているその立ち振る舞い。これは、非常にまずい。



 「答える気はない、と。ならば無理矢理にでも聞かせてもらおう。恨むなよ?」



 そう言ってエインさんは庵をしっかりと見据え槍を構えた。



 何故、こうなった……?

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