8話
罪人のような姿のまま三人に連れられて歩くこと数十分。犯罪者予備軍ということで殺伐とした雰囲気で歩いていくのかと思いきや話しかければ会話をしてくれるし、相手から話題を振ってきてくれることもあるぐらい明るい雰囲気だった。
「お前さん記憶がないとか言ってたが自分のクラスとかはわかるのか?」
「クラス……?僕ぐらいの年の子は学校に行くのが普通なんですか?」
「いや、学校の話じゃなくてだな……クラスっていうのは自分の戦闘スタイル、及びその階級を表すもんだ。俺なら剣をメインに使って戦うソードマン、ベルならば弓を使うアーチャー、カイルなら魔法をメインにしているマジックキャスターといった具合だな。」
「あぁ、職業のことですね。僕は多分……」
この世界では剣士も魔法を使えるのだろうか?もし使えないとしたらいきなり怪しまれてしまう。もしくはなんか変な特殊クラスでも設立されてしまうかもしれない。といっても剣担いででてきた時点で魔法使いとは言えないんだよなぁ……
「剣担いでますし、剣士……じゃないですかね……」
チラっとカイルに目を向けるとカイルは特に何も考えている様子もなくこちらを見ていた。
「まあそうだろうな。レベルもあんまり高くなさそうだし上級クラスってことはないだろうしな。」
「上級クラス?」
「…上級職は下級職の中で神様や妖精からの加護とかスキルを貰った人のこと。レベルを沢山あげて人々から信用を得られないと教会で加護は貰えない。だからレベルが低かったり信用度が低そうな人は基本的に下級職。」
アホみたいにオウム返ししてしまったことを一瞬まずったと思ったがベルさんが上級職についてサラっと説明してくれた。上級職とはゲームでいう転職やクラスアップに相当するもので教会とやらに協力してもらえるぐらいには信用がないとなれないものらしい。
「ちなみに皆さんのクラスはその上級クラスですか?」
「あぁ、その通りだ。俺のクラスは剣士から始まり騎士、ソードマン、最後はパラディンになる。俺はそのうちの三段階目のソードマンだ。といってもパラディンは国に一人いるかいないかレベルだから実質一番上のクラスだな。」
「私のは弓兵、弓師、アーチャー、ハンターになる。最上級クラスは魔法、弓、剣合わせて国に一人いればいい方。だから一般人は三段階目が目標になる。」
どうやら一番強い職業はかなり条件が厳しいらしい。この世界に国がいくつあるのかはわからないが最上級クラスが両手で収まるぐらいしかいないのは確かだろう。
「みなさんすごいんですね……」
「あぁ、そうだぞ。もっと敬え。」
「……カイル、調子に乗るな。」
とまあこんな具合に情報を収集しつつ道中を歩いていたわけだが、街の入口が見えてきた。
「じゃあちょっと話しつけてくるからここで待ってろ。」
カイルはそう言い残して門番のところへとかけていった。カイルが近づくと門番はお辞儀をしてから会話を始めた。それなりに偉い人なのだろうか?多少の談笑でも混ぜながら会話していたのか顔には笑顔
がある。少しするとその顔が困ったような顔に代わり、カイルとともに門の中に入っていってしまった。
「あの、置いてかれてしまったんですけど大丈夫なんですか?」
「多分、騎士団の人を連れてくるだけ。待ってればいい。」
質問をすると当然のように返事が返ってきた。こういうやり取りが今までに何度かあったのだろうか。やけに慣れている気がする。しばらくするとさっきの門番とともにカイルともう一人、白い鎧を纏った騎士風の男(というか多分騎士)がやってきた。見た目は爽やか風イケメンといった感じで目は透き通った青で髪は金髪のロング。耳が尖っているのでエルフだろうか?
「こいつがさっきいった奴だ。こっちで話はある程度聞いたからそっちは事実確認だけしてくれればいいぞ。」
「そういう仕事は我々の仕事なんですがね……まあ楽ができるのでいいのですが。」
「おう、感謝してくれていいぞ?」
「そもそも問題を持ってくるのもあなたなんですから感謝するわけないじゃないですか……」
「お?そうだったか?まあ頑張れや!」
「いやだからあなたが……もういいです……」
完全に疲れきった感じで項垂れているイケメンエルフの背中をカイルとバシバシ叩いて励ましている。疲れさせたのはカイル本人だと思われるのだが……さてはこの人問題児だな?まぁ、今回問題起こしたのは俺だけども。
「えーっと、初めまして私はこの国で騎士団長をしているエインです。今日はあなたが禁止エリアで魔法を行使したということで事実確認をしにきました。それについて間違いないですか?」
エインという名乗ったイケメンエルフの問に対して庵は無言でただ頷いた。
「わかりました。事情聴取は済んでるということで今回は事実確認になります。ご同行していただけますね?」
「はい。」
「よーし、俺の仕事終わりだな。いやぁいいことしたなぁ!」
「もう、あなたは早く帰ってください。門番の君も仕事に戻っていいぞ。ではベルさんこの子の身柄はこちらで預かります。後日報告に参りますのでそれまでお待ちください。」
そういうと庵を繋いだ縄をベルから受け取った。やたらと慣れているなぁ……騎士団長ってことは偉い人のはずだけど、こんなことをよくやっているのだろうか。
「じゃあなボウズ!次からは気をつけろよ!」
「……次はない。」
町に入るとその場で二人とはお別れになった。いい人たちだったので少し寂しい。
「この街には騎士団の使う詰所があります。そこに聴取部屋というのもあるのでそこでお話を聞かせてもらいましょう。」
そう言いながらエインさんは庵の縄を持ったまま歩き始めた。この格好だとどう見ても犯罪者って感じだし見た目何とかして欲しい、とは思っても言えない庵だった。