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7話

 降りれる場所を探し始めた庵だったが、森の中を歩き続けた末にようやく街が見える場所まで来たというのに回り道をするという行為に嫌気が差した庵はスキルをつかって無理やり崖を降りることにした。といっても飛行系の魔法は作っていないし、召喚系の魔法も大体使えないので今回使うのは【ウィンド】という魔法だ。




【ウィンド】

魔力を用いて風を発生させる。

圧縮して相手にぶつけることで相手にダメージを与えることもできる。

使用時MP15を消費し、80%のダメージを与えることが出来る。

発生させた風はMPを消費し続けることで持続させることができ、持続時間1秒当たりMPを追加で10消費する。

【スキルファクターによりMP追加消費量増加適用中】




 崖から飛び降り、地面にこの魔法をぶつけて落下の勢いを完全に殺して降りてしまおうという作戦だ。ちなみに前の世界ではよくやっていたので飛び降りることへの恐怖などはない。だがレベルが下がったこの状況ではどれだけMPを消費すれば勢いを完全に殺せるかが分からないため、かなり不安がある。




 「まぁ…やるしかないか……」




 崖から地面を見下ろし、高さをある程度予測。それによってどれぐらいの威力があれば勢いを殺せるかを頭の中でなんとなく想像していく。庵は考えがある程度纏まったところで助走をつけて勢いよく崖から飛び降りた。




 「うわぁ…落ちてるわ……」




 久しぶりの落下に少しばかり恐怖を覚える。それでも地面はどんどんと近づいてきている。やるしかない。落下しながら体制を整え右手に魔力を込める。どれぐらいの威力にすればいいか分からないため取り敢えずたくさん込めることにした。




 「いけッ!!!!!」




 地面が近づいたタイミングでスキルを地面に叩きつけた。すると地面に当たった魔力の風が勢いよくあたりに撒き散らされた。それによって落下の勢いは消されたのだが、魔力を込めすぎたようで庵の体は勢いよく中に放り出された。




 「ヤバイ、やりすぎた!」




 庵は再び魔力を右手に込める。先ほど込めた魔力の3分の1程度だ。それを地面にもう一度叩きつける。しかし今度は威力が足りなかったらしく、勢いが殺しきれなかった。更には体制も整えることができなかったため、お尻を強打することになってしまった。




 「いてて……自分のステータスが分からないと調整が難しすぎる…」




 やはりステータスが分からないというのは危険だと改めて認識し、お尻をさすりながら立ち上がると、体の奥に違和感を感じた。




 「ん…?この感じ、MPが減った…?2回で大体80程度か…?」




 スキルを使ったのでMPが減るのは当然なのだが、なんとなくMPがどれぐらい減ったかどうかが頭で理解できる。これは前の世界ではなかった感覚で、前の世界でスキルを使うときは予め消費量と自分のMPを計算した上で使用していた。この世界ではMPというのは人間のスタミナのようなものなのかもしれない。




 「要検証だな……」




 落ち着いたら色々検証しようと考えていたところで、誰かが近づいてくる気配を感じ木陰に隠れた。庵は予め道になっているところに飛び降りたのだが、どうやら崖側にトンネルがあり、その中に人がいたらしい。トンネルから出てきたのは大剣を背負った見た目青年の大柄の男性が1人に、杖を手に持ち白いローブを身に纏った姿をした男性が1人。そして茶色のコートの様な服を来てフードを深めに被った恐らく女性であろう弓を持った人が1人。年齢はみな同じくらいで恐らく20代中盤ぐらいだろうか。





 「おいレイト、お前が魔力を感じた場所ってのは本当にここか?ここは魔法の使用を禁止されてる街道だぞ?そんなとこで魔法ぶっぱなす奴なんかいるのかよ?」



 大剣を背負った男は剣に手をかけ、周囲を警戒しつつそう聞いた。


 「はい、確かにこの場所です。少しではありますが魔力の残骸が残っています間違いありません。」


 魔法使い風の男の杖は青く光っている。恐らく魔力を感知する魔法か杖の効果なのだろう。



 「ここで魔法放つ奴って言うと盗賊かなにかかもしれねえな。被害者がいないかどうか辺りの調査と場合によっては討伐の必要があるな。ベル、辺りの気配をチェックしてくれ。」



 男がそう言うとベルと呼ばれた弓使いの女性は弓を構えた腕をだらんと下ろし、目をつむった。すると女性の体がほのかに光を放った。光が収まると即座に弓を構え庵の隠れている木に向かって矢を放った。




 「…そこに隠れてる奴、今すぐ出てきて。そうすれば命までは取らない。」



 その行動を合図に男性二人も武器を構えて戦闘態勢を取った。




 (えぇ…何魔法禁止のエリアってそんなの知らんわ!ていうか盗賊ってなんだよ、誰も周りいなかったじゃねえか!とにかく出ていかないと確実に討伐される…どうにかせねば…)




 庵は素早く防具に換装すると、防具に【偽装】のスキルをかけた。




【偽装】

自分の物に限り、見た目を別のものへと変更する。

代わりのは見た目のみであり、性能は全く変化しない。

長さや太さなどの情報は変更することができず、同じ長さ太さの見た目にしか変更できない。

自分よりスキルレベルの高い看破や偽装解除によって解除される。

【スキルファクターにより看破に必要なレベルが減少中】




これにより武器を青色の透き通った物から古びた普通の大剣に、ローブを古びた灰色の物に、白いYシャツは薄い茶色にしてTシャツのような見た目に変更をしスーツのズボンの様な鎧下は大工が付けてそうな足首の辺りが少し膨らんでいる革性のそれっぽいものへと変更した。色は灰色に茶色と来ているので白にした。




 「出てこねえってことはそういう奴ってことでいいんだな?それじゃあ悪いが狩らせてもらうぞ!」

 「ワァア!待ってください別に怪しいものじゃないです討伐しないでください!!!」




 ギリギリの所で偽装を終えた庵はどうにか討伐される前に三人の前に出ることができた。出てきたからといってそういう奴じゃないと断定する要素はどこにもないので未だに警戒されたままなのだが。





 「どんなのが出てくるかと思えば、こんなガキが出てくるとはなぁ。」

 「カイル、油断良くない。魔法使える奴かもしれない。警戒して。」

 「そうですよ、どんな相手でも油断してかかれば痛い目を見る可能性があります。きちんとしてください。」

 「分かってるよ、ただ盗賊かなんかかと思ってたからちょっと拍子抜けだっただけだ。」



 三人組はそんなやり取りをしている間こちらから視線を一度も外さずきちんと警戒している。正直やりあっても勝てる気がしない。となればここは穏便に会話で済ませるしかない。




 「あのー…さっきも言いましたけど僕全然怪しいものじゃないんですよー…ちょっと道に迷っちゃってこの変歩いてただけで……」

 



 などと適当に思いついた嘘を並べてみる。これでどうにかならないかなぁ…




 「道に迷ってるような奴がどうして街道で魔法をぶっぱなすんだ?この辺は結界で魔物もでないはずだ。怪しいものじゃないなら答えてもらおうじゃねえか?」




 ああ、森で全然魔物に合わなかったはあのスライム以降結界とかいうやつの中に自分がはいってたからだったのか…などとどうでも思ってもない所で疑問が解消された訳だが目の前の問題が全然解決に向かっていない。騙すにしても自分の知識が足りなすぎる。




 「えっと…実は森から歩いてきて出口が見えて走ってきたら崖から落ちてしまったんですよー。それで死なないために風の魔法でちょっと色々したといいますかなんといいますか…」




 結局正直に話してしまった。なんで森にいたのかとか本当は自分から飛び降りたなどは言ってないにしろ大体合ってることを適当に並べてこの状況の打開を試みる。




 「道に迷ったと言っていたな?なんであんたは森に居たのか教えてもらおうじゃねえか。」




 マズイ、異世界から転移してきたとは言えないし、あるかわからないが下手に嘘言って相手が看破のスキルとか持ってたら一発でバレてしまう。ここはスキルに引っかからないように慎重に言葉を選んで発言しなければ…




 「実は気づいたら森にいて、自分があそこにで何をしていたのか分からないんですよ。この場の記憶も一切なくて自分が誰かぐらいかしか今の僕にはわからないんです!!!」




 嘘はいってない。だが若干日本語がおかしくなっているのでバレてしまう可能性が高いが、どうだ…?




 「カイル、多分この子嘘は言ってない。信じて大丈夫。」



 などとドキドキしているとベルさん(仮)が助け舟を出してくれた。



 「ふむ、お前がそういうならそうなんだろう。疑ってすまなかったな。俺はカイル、この二人と共に冒険者をしている。お前の名前は?」

 「僕はイオリです。魔法禁止の場所で魔法使っちゃってすみません…」




 取り敢えず警戒心を与えないためにも年齢相応の態度と口調で行かなければならない。正直恥ずかしいがこれからもこういう場面は多いだろうし慣れておくしかない。




 「盗賊じゃないことは分かったけど、結界の中は魔法禁止。もし使ったら王国騎士から取り調べを受ける決まり。見逃すわけには行かない。」

 「という訳だ。悪いが俺らに付いてきてもらっていいか?」


 


例え子供の姿をしていようと罪は罪。きちんと罰を受けなければならないらしい。




 「はい、分かりました…それでどこに向かうんですか?」

 「すぐそこに見えるヘイト王国って国だ。まぁ見たところ今回は初犯で記憶がない?みたいだし恐らく事情聴取だけで終わるだろう。」




 どうやらこの人たちは崖から見えたあの町まで連れて行ってくれるらしい。少し目立ってしまったがこれはラッキーだ。




 「分かりました、よろしくお願いします。」

 「それじゃあ行くか。レイト、悪いが一応この辺の調査をしておいてくれるか?もしかしたら取り調べで必要になるかもしれないからな。」

 「分かりました。それでは私はこの辺りを一通り調べてから町に向かいますのでお二人はその子を町まで連れて行ってあげてください。」

 「うん、任せて。それじゃ、とっとと歩く。」




 と言ってベルさん(仮)は庵の手をどこから出したのか分からない縄で縛り、レイトさん(仮)と別れヘイト王国という他の国から敵視されそうな名前の国へと向かうのであった。

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