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4話

 目を開けるとそこは知らない場所だった。周りを確かめると、あるものは高さも揃えられていない無造作に生えている草木達。木の高さは中々有り、葉っぱもたくさん生えている。にも関わらず太陽の光はしっかりと地面まで届きどことなく安心感を与えている。


 庵は体の調子を一つずつ確認していく。目から始まり鼻、口。首を大げさに回しその後肩にも異常がないか何度か腕を振ってみる。その調子で体の状態を一つずつ確認すると特に以上がないことが窺えた。



 「無事転移できたみたいだな…」



 体の確認を終えて伸びをしながら庵はそう呟いた。


 

 神の提示した二つの道。庵が選択したのは後者であった。何故なら今更復讐とした所でその後やることなどないし、何より自分を消そうとした国は既に消えているのだ。今更戻って復讐したところでそれは復讐ではなくただの八つ当たりになってしまう。



 「取り敢えず神様の言ってた調整とやらを確認するか…」

 


 神様は能力の調整と言っていたが細かい説明は特にしてくれていない。自分の中では勝手に運営による下方修正のようなものだろうと認識しているが、その調整がどれぐらいの制度なのかが分からないまま知らない土地で好き勝手やるのはあまりにも危険すぎる。


 「という訳でステータスの確認をしようと思ったわけだが……世界が変わっても前の世界の法則が通用するのか…?」


 そもそも調整のことどころか新しい世界についてもなんの説明も受けてない。前の世界ならばステータスを開こうと考えれば勝手に開いたし、スキルやアイテムインベントリも一緒だ。だがそれがこの世界でも通用するとは限らない。というか通用しないのが当たり前だ。


 「取り敢えず色々試すか…」


 物は試し。取り敢えず自分の知ってる知識の中からいくつも試していくことにしよう。


 まずは一つ前の世界の開き方。頭で開けと思うだけで前の世界では開いたのだが、この世界ではどうだろうか…


 「…開かないな。」


 やはりこの世界ではこの方法は通用しないらしい。そもそもこの世界にステータスという概念は存在しているのだろうか?地球の日本では少なくともステータスやスキル、魔法といったものは存在せず、見た目や動きで察するのが常識だ。この世界になくても何らおかしくはない。


 それでもまだまだ試してないのはいくらかある訳だから全て試してみることにした。


 空中で指をスワイプしてみたり、ステータスオープン!やオープンステータス!といった呪文もどきを呟いてみたり手に魔力を込めてステータスと空中に書いて遊んd……試してみたりと知っている少ない知識を元に色々と試してみたが、やはり開かない。


 「この世界にステータスというものは存在しないのだろうか…」


 ステータスが分からないというのは大問題で、HPやMPといった戦闘に直接関わるものやINTやDEXなどの身体に影響のあるような物が分からないというのは自分の実力が分からないと言っているようなものだ。


 (もしかしてこの世界ではスキルは使えないのだろうか…)


 そんなことを頭で考えたところで一つの窓が表示された。





 椿原庵 スキルメニュー




 そこには見慣れた文字と画面が表示されており、自分の名前もしっかりと入っている。



 「うん…?ステータスはないのにスキルは開けるのか…?」



 よく分からないがスキルは開けるようで、自分の所有スキルがそこには全て載っていた。



 庵数あるスキルを全て無視し、一番下までスクロールし一つのスキルを見つめる。




 【スキルファクター】



 このスキルは庵がまだ日本にいた頃考えたもので、異世界に飛ばされた際に神様から授かったスキルだ。このスキルは庵が唯一自分で考え自分で調整した物で、とにかく設定が細かい。そのスキル効果が以下の様な物だ。




 【スキルファクター】

 自分の知識にある魔法やスキルと言った物を作成することができる。

 作成するためにはそのスキルや魔法に関する知識が完璧でなくてはならず、スキルファクター使用時に習得成功、失敗に関わらず最大MPの50%を消費する。

 作成したスキルは必ず初期段階から始まり、スキルレベルを一定レベルまで上げることにより進化させることができる。(スキルレベルを上げる方法はスキルを使用する、又は長期間保有している必要がある。)

 スキルの初期段階は記憶の中にあるスキルや魔法などから近い物が選択され、最大2段階進化する。進化後も前段階のスキルは使用できる。

 作成したスキルは自分のレベルによって効果が減少、あるいは消費MPが増大し、効果に見合うレベルに達していない場合スキルを発動することができない。(ただし発動時にMPは消費する。)

 スキル作成時には特殊スロットを一つ消費し、特殊スロットに空きがない場合作成することはできない。(ただしMPは消費される。)

 作成したスキルは24時間に一度削除することができ、削除時に最大MPの50%を消費する。

 初期:特殊スロット数50  現在:特殊スキルスロット50 レベル10に付き一つ追加される。

 このスキルを所持している間、必要経験値が増大し、獲得経験値が大きく減少する。

 スキルファクターの効果によってスキルファクターを作成することはできず、譲渡はできない。




 といった具合にどんだけ制限かけてんだと言いたいぐらいに制限をかけ絶対に俺TUEEさせないマンにしてあるのである。だが庵はスキル効果を読みきったあとに首をかしげた。



 「最後のほうが色々と変わってるな……」



 庵が前の世界で使っていたスキルファクターとは効果が少し違う。前の世界のスキルファクターは初期スロットは2だったはずだ。何故最大数と同じになっているのかがわからない。そして何よりスロット増加に必要なレベルが10になっていることだ。前の世界では必要経験値を増やしている代わりに5レベで一つ開放にしていた。そして獲得経験値が減少することに関してはもはや初見である。経験値に関しては数値すら変わっている。昔は「必要経験値増加」であったはずで「必要経験値増大」などではなかった。獲得経験値減少と合わさってほぼほぼレベルが上がらないと思われる。


 「なんだこの調整……最強キャラが一瞬で最弱になったような調整だぞ…」


 これはもはやこの世界でレベルは上がらないと見て間違いない。そもそも庵は前の世界でレベル250であり、龍族を何万体倒しても上がらない様なレベルだったのだ。今更気にしても仕方ない気がしなくもない。


 だがそこでふと思ったことがあった。



 《自分は今何レベルなんだ?》



 そう現在のレベルだ。レベルとは身体能力に直結してくるのは勿論で、庵の場合はレベルを参照して効果が発動するスキルをいくつも作成している。つまりレベルが下がるというのは庵にとっては一般人の何倍ものステータス減少に繋がるため、現在のレベルを確認するのが一番大事ということになる。


 「でも開けねえんだよなぁ、ステータス……」


 ステータスが開けないということはレベルがわからないということでもあり、スキルが何回発動できるのかどうかすらわからない。だが確認方法はひとつだけあった。


 スキルファクターによるスキルの調整だ。正確な物は分からないが、レベルが足りなければスキルの能力が減少する。その数値を見てある程度自分のレベルにあたりを付けることができる。


 庵はスキルのスクロールを一番上に戻し、スキルを確認する。


 確認するスキルは【ファイア】


 このスキルは庵が前の世界で最初に作ったスキルであり、その上である【ファイアランス】【ブレイズランス】も習得している。このファイアというのが作った中で最も減少が軽かったスキルだ。(軽かっただけで現象はあったのだが。)


 【ファイア】

 炎を発現させる。

 炎を生み出し、攻撃することができる。

 使用時MP25を消費し、120%のダメージを与えることができる。

 【スキルファクターにより威力減少効果適用中】


 「えっ、うっそだろ……ファイアで減少効果適用…?俺のレベル今半分以下なんじゃないか…?」


 ファイアは初期の方では多用したが、ファイアランスを覚えてからは火を焚いたりする時などでしか使っていなかった。そのせいでダメージ%を見てもどれぐらいのレベルなのかは分からないが最初期スキルですら減少効果が適用されているのはかなりヤバイ。もしかしたら最終進化スキルは一つも使用できない可能性があり、ステータスがとても悲しいことになっていることは確定である。


 恐る恐るブレイズランスを確認してみるとそこには



 【ブレイズランス】

 炎の槍を出現させ、相手を焼き払う。

 ファイアランスに比べ炎が安定したことにより、貫通力及び熱量が大きく増している。

 射出時に高速回転し、速度と貫通力が大きく増加する。

 使用時MP---を消費し、---%のダメージを与えることが出来る。

 【規定レベルに達していない為現在使用不可】


 と書かれていた。


 「ハハ…アッハッハ…」


 庵から乾いた笑いが漏れた。


 これはもう笑うしかない。前の世界では進化させた際に能力減少効果が乗っていたことは当たり前にあったが、使用不可なんて表記されたことは一度もない。


 つまりこのスキルは本来作れないぐらい現在のレベルは低いということになる。そもそもこのスキルに進化させた時点でのレベルが120で、その時はレベルによる威力低下でファイアランスの方が強かったのだ。それがまず作れないとなると現在のレベルは100を切っていてもおかしくないということになる。


 スキルファクターの初期スロットが50であったのはレベルを下げる際にスキルをリセットさせないための配慮だったのだろう。一体どこまで下げられたのだろうか…


 「とにかくこの森を出よう。魔物とかいたら負けてもおかしくない…」


 まさかこのレベルになって魔物を恐れて森からの即時撤退を考えることになるとは前の世界では考えられない。だが…


 「また少しずつ強くなれるのは、なんだか燃えるな…」


 前の世界ではもう味わうことができなかった成長と育成。日本にいた頃からゲームや漫画が好きだった庵にとってこの調整は合っていると言えた。


 「弱くなったならまた強くなればいい、初めから俺TUEEなんかよりよっぽど楽しそうだ…」


 そうして庵は森の中で絶望と歓喜に打ち震え、ひとまず森から脱出することを目標にするのだった。

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