1話
この世界には沢山の物語がある。日常を題材にした物や、オカルトやファンタジーなどの非現実的な世界の物など、ありとあらゆる物語がこの世界には存在している。
その中でも特に数が多く、人気が高いのが異世界を題材にした物語だ。
何かしらの要因で死んでしまい転生をした、異世界に勇者として召喚された、何かの儀式に巻き込まれて別の世界へと移動してしまったなど、理由はどうあれどこかしらの世界へと行き何かを成し遂げるというものだ。
そしてこういった作品の最後は大体異世界で幸せに暮らす、自分の世界へと帰る、その後伝説として語られるなどの文章や、少しのアフターストーリーのみで終わってしまう。
役目を果たすまでのことは事細やかに書かれているのに、その後のことはやけにあっさりと終わってしまうのだ。
なぜ勇者や英雄、転生者などが必ずといっていいほど幸せになれるのだろうか?
これだけの数の小説やアニメ、漫画などがあればそれなりに幸せになれなかった物もあるのであろう。
だがそういった作品は少ないのが現実だ。
やはり人というのは悲しみに溺れる人の話より、最後は幸せになる作品を好むのであろう。俺だってそうだ。
もし自分が主人公になれたら、なんて思ったことがある奴は五万といるだろう。
だけど主人公になったからハッピーエンドを迎えられるなんて、誰が決めたのだろうか。
このお話はみんなが望むエンドを迎えることができなかった勇者の、二度目の人生のお話。
二度目の人生こそは幸せになりたい。そう願った男のお話。