始まりは指から。
ちょっとグロいかもです。
最初に目にしたのは人差し指だった。
次は中指、薬指、親指とかけて。
小指が見当たらなかったのは不思議でしょうがなかったが。
闇が痛みを伴うように、激しい頭痛が押し寄せてくる。
時折、目映い光は感じられたが、それでも否応の無いまでに好奇心を擽るのだ。
煌々と照らされた街灯のもと。
最終的に辿り着いた視線の先には、深紅に染まり脈打つ鼓動。
決して動脈や静脈とは繋がることの無い心臓がまるで戯れに置かれたかのようにバクバクと激しく波打つ。
多分、これは悪夢に違いないだろう。
もし、傍に誰か見知った者が居れば頬をつねるように指示していただろう。
だが、夢から醒める事はなかった。
今もなお目の当たりにしている心臓がいったい誰のモノであったのだろうか。
懸念は尽きない。
ただ……ぽっかりと空いた穴だけが真実を語りかけていたのだ。
どうやら、私は自分の四肢を切り刻み心臓をくり貫いたらしかった。
あまりのくだらなさに最早、笑みすら溢れてくる。
たったひとつの塊だろうに、血の涙を流しながら。
全てが真っ赤に染まってゆく。
胃袋に流し込んだ小指を消化しつつ。
と……その時。
何処からともなく侵食してきた旋律にふと耳を傾けてしまう。
「ねんね~ん。 おころ~り。 おころりよ~」
その歌声は、既に眠りに就いていたというのに、更に私を深い眠りへと誘うのだ。
いったい全体、もう。
どこまでが夢で、果たしてどうしたら現実に戻れるのだろうか。
辺りは全身を血にまみれた住人や、脂肪など一切纏わない骸骨が然も嬉しそうに出迎えていた。
こうなってしまえば……抗うのは無駄というものだろう。
全てを諦め、投げ出そうとした矢先。
闇の合間を縫って巨大な眼差しが切に訴えかけてきた。
「それでも……生きたい?」
目覚めるのに数秒も費やさないだろう。
全身は汗にまみれ、よもや脱水状態である。
一粒大の汗を拭い、傍らにあったペットボトルを一気に喉に流し込んだ。
だが、その味わいときたら……それは直ぐにでも吐き出してしまいたくなるような。
何者かの血を飲み干してしまった感覚。
咄嗟に嗚咽は溢れてしまう。
「ぐぼえええええっ!?」
息を継ぐ間も許さず、絶え間無く押し寄せてくる吐き気。
1日に食べたモノを全て床に吐き散らかしながら、ふと違和感を感じて天井を見上げる。
そこには……。
ありとあらゆる死者の憎悪が渦巻き、眠る事を許さないような目付きや怨念があったのだ。
平凡な日常を送ってきた私には一切落ち度はなかったというのに。
何故、このような酷い仕打ちが待ち受けていたのだろうか。
数日後、空っぽになった部屋で。
彼等と同化してしまった私は現場を捜査している刑事を眺めながら。
いつか皆を引き摺る如く、地獄で待ち受ける。
こんな……不条理を許してなるものか。
誰かを貶める為にならば、身体を擲っても構いやしない。
そう、この世は邪悪に満ちているのだから……。