サーハ元王の腹づもり
大変長らくお待たせしています。
かける時間が無くて開けてしまうと、書けない!書きたくない!と言う呪いに襲われて、書こうとすると落ち着かなくなり書けなくなるとか怪奇現象wに見回られてました。
リハビリに文章を書き起こしてみて、今日の分が完成しました。
これからもどうぞよろしくお願いします。
アムルドはかつてサーハの王であった男だが、今は国政の裏方が主な役割となった。
かつて第一皇子であった長男も同じく、アムルドと同じ身の上となった。
魔神の存在とそれを従えさせる屈服の証の魔法の指輪は、野心家であり国益のため欲望のために他国侵略も辞さないと言う強い姿勢だったアムルドを失脚させるには十分な材料だった。
万能の利器と、それを使う事を許された者を前にして、不興を買う必要はない。
アムルドは即座に判断して玉座を明け渡した。
長男と次男をはじめ、幾人かの大臣達は、ボンクラだと侮っていた三男が実は優秀であったのか、全ては計算であったのか、と衝撃を受けて戦々恐々としていたのを内心アムルドは呆れていた。
三男はボンクラである。間違いなく。
しかしその性質が何でも願いを叶える魔神との相性が良く、良い方向に物事が流れただけに過ぎないのをアムルドは把握していた。
幼い頃の三男を思い起こせば、何事にも起こり得る行き詰まりや障害が生じた際、周りに泣きつき自らの力で達成することを丸投げするのだ。
諦める、と言うよりも投げ捨てる。
心の底からの甘えの権化なのだ。
アムルドは精力的に政策を国営を運営し、戦歴も華々しく現役でもう何カ国か傘下に収める戦争も収める算段だったし、長男も、戦や政敵への強硬な態度や対処はアムルド譲りであった。
次男は幾分か長男よりは戦においての武勲は劣るものの、ほんの僅かでしか無く、何よりも頭脳派で内政外交戦略などにおいてはその他よりも一線を画す。
三男は甘えたで権力志向も低く、国家としてはこの先も代替わりを見越したとしても安定していたのだ。
魔法の指輪(指輪の魔神)と言う、大番狂わせが全てを塗り替えた。
しかし、アムルドは悲観はしていなかった。
次男は宰相として三男のそばに置いている。権力に下手にすがりつこうとする愚行を行う家臣よりは、三男の甘えを受け入れなれてる次男に任せた方が良いのだ。
長男は逆に、頭の中全て筋肉でできている様な思考をしているため、アムルドはそばに置くことにした。
玉座を辞したこの機会に、王太子では無くなった道で、さらなる自分を開拓させていくのも一興だと考えていた。
だから、無茶で愚かで仕方のない三男の命令(お願い)を聞き入れたのだ。
トランの双子姫をどうしても娶りたい為に、トランへの使者へ元前王と元王太子を任命した三男。
離海を渡れる船と、双子姫とトランへの貢物の山ほどの財宝。
全ては指輪の魔神が用意したもの。
三男はこれで、トランの双子姫と縁談が成功すると思っている様だが。
「つなぎを作るには十分であろうが、縁談は無理だろう」
アムルドは長男に話す。
「お互いに国家として知らなさすぎる」
単純明快な理由である。
「先ずは、何よりも我が国と我が国王の意向を知ってもらった上の、今後の付き合いを繋げていく話し合いからだ。
ヴェドム、この度のトランへの取り成しはお前主体で進めるが良い」
「父上?」
長男がアムルドを少し気遣わしげに見つめる。
アムルドは長男を見て、そして遠くを見る。
「何よりも先に、トランにたどり着くのが先決ではあるのだがな」
離海にまだ船は出していない。
膨大な積荷と長旅の準備の支度がまだ整いきれていないのだ。
「無駄な時間を使う気は無いが、無為に急がせる気もない。
ヴェドム、皆に落ち着いて確実な仕事をする様に指示をしなさい」
「はい、父上」
ヴェドムが現場の指揮を取り始めた。
その様子を確認してから、軽くない溜息を吐き出す。
「後宮の娘や孫達の嫁ぎ先の面倒もまだ見切れていないというのに。
あやつの脳裏に姉妹達の将来は入っておるのかおらぬのか」
何気なく深刻な独り言を漏らしてしまうのだった。
予定では、3日後に離海を出る。
いよいよトランへの大行進が始まる。
ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。




