契約は婚姻
やっとお風呂です。
ほかほか温まって欲しいです。
「ぱちゃ、ちゃちゃちゃ!」
「ぱちゃぱちゃ!ぱちゃぱちゃ!」
ベルデアは、この城の風呂そのものを作り変えたようだ。曰く、あまりにも不衛生極まりなく放置されて来た様子で、我慢できずに焼却したそうだ。
そう言えば、ベルデアは几帳面で綺麗好きだったな。
俺の城も常に美しく保たれているのはこの優秀な腹心がいるからだ。
そして俺たちの入浴も側仕えたちが滞りなく進める。
体を洗われて主人たちは目を覚ました。今はたっぷりの湯にルーに抱かれて遊んでいる。
と言うか、ルーは双子を本気で気に入っている様子。離す気はないようだ。
溜息をつくと、ルーはちらりと俺を見やる。
「なぁに?羨ましいの?」
「ふん、羨ましくなどあるものか。これから俺はお前と違っていくらでも主人たちと入浴できるのでな」
自慢してやると、ルーはゆったりと微笑んだ。
「ああ、そうか。うん、大丈夫だよ、僕も彼女たちと結婚するから」
しれっと言ってのける。
主人たちと魂の契約を結ぶつもりらしい。
「ねー?僕とずっと一緒にいたいよね?」
湯の中に花々を咲かせたりと主人たちの遊び相手をしながら、ルーはそっと囁いて尋ねた。
「ずっと?ゆうたたまとーぬーたんとー?」
「ぬーたん!ぬーたんおはな!おはな!」
水面を力一杯叩いて雫を飛び散らせながら大変元気かつ上機嫌で主人たちはルーに応える。
ルーは次々と花を溢れさせてやる。
ルーの名前をぬーたん。気に入ったのか。しかし、俺はゆうたたまだ。特別枠である。何を気落ちする必要があるか。
「僕を受け入れてくれる?ずっと遊んであげる。愛していくよ、大切に守るよ」
「「うん!いーよー!」」
主人たちはあっさり返事をした。
はああぁ。
まあ、するとは思っていたが、な。
「ふふ、良い子達。僕に……、僕達に君たちの全てお任せしてくれるかい?お任せするって言えるかな?」
「ネーおまかしぇちゅる!」
「メーも!メーも!」
双子が元気よく跳ねる。その度に湯が跳ねるがルーは動じないし全く気にもならん様だ。
うっとりと微笑んで双子にキスの雨を降らせる。
「大切にするからね」
「お前は本当にお前の父親にそっくりだよ」
呆れて言ってやると、ルーは嬉しそうな顔で俺にも笑いかけて来た。本当に嬉しいのだろう。気持ちはわかる。
この主人たちは、双子は奇跡だ。
「あちゃちゃちゃちゃ!あ!あ!メー!おにゃまえ!わちれてた!」
「ネーも!わちれてた!わちれてたー!」
きゃきゃきゃきゃきゃ!と笑い転げ暴れまわりながらルーの腕から脱出して俺の所へ来ようとするので二人ともを迎えに腕を伸ばす。
「ゆうたたま、ゆうたたま、あにょれメーねー、メルなの!メールーなーのー」
「ネーねー!ネルなにょ!ネー……」
ネルの体がカクンと力なく崩れる。湯に落ちないように支えて抱き直す。電池切れのようだ。
「ゆうたたま、おかかたまぬーたんたちけてくれてありが……」
ネルに続きメルも電池が切れたようだ。
「出るか」
「ふふ、可愛いね、僕達の奥さんたちは」
ルーは幸せそうに微笑んだ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
試行錯誤しながらの投稿ですが、一人でも誰かの目にとまり、届けばと思います。