風の思慮
お久しぶりでございます。
やっと書き出せる時間と体力が戻った感じですが、長らく長らく間が空いてしまいました。
物語再開前に注釈的説明回の様な更新になりました。
予定は未定ばかりで申し訳ありませんでした。
一粒ずつ、一片ずつ、一雫ずつ………、何かを起こすために何かが動いている。
エルメイロスは世界の隅々までを感じて思う。
何者か、いや違う。
何か、としか言えないもの。
そよと風が吹く。
眷属の囁きが聞こえる。
ナニカ クルッテル
そう、囁きが言わんとしている事は感じている。
何かが狂っている。
ボタンの掛け違えのような、分かりやすい違和感の様なものにも感じるし、全く事の違う現象の様にも感じる。
トランの双子の王女を思い浮かべる。
出自は知っている。
けれど、それはあくまでこの世界においての、と注釈が付くものだ。
明らかに双子を産み落とした母親は、この世界を選んで処女受胎を経て、双子をこの世界に招いた。
世界は寛容だ。
強大な魂の質量を二つも受け入れて、この世界の子たる存在として祝福を与えた。
けれども、まるで存在を排除させようという働きもある。
双子は、酷く呪詛を受けているとエルメイロスは判断する。
「ヒトの肉を着てるのは隠れ蓑かな?」
メルもネルも、一応人間という形はとってはいるが、あくまで形だけ。
その存在はその他に埋没するものではない。
何よりも、魔王たるものを勇者として側に置いている時点で、並みの強運ではないのだ。
彼女たちに巡る全ては強大だ。
そして、彼女たちの何もかもを阻止せんとする力も矮小ではない。
周りの人外達がこぞって力を貸して教育して鍛えて、人と言う存在では持ち得ない強靭さを発揮して、双子達は呪詛をその都度弾き飛ばしている。
自覚はしていないのだろうが。
まだあどけない少女達は神々しくも悪魔的に日々遊びに夢中だ。
ある時は救い、ある時は破壊、そして殺戮。
無邪気の塊だ。
魅力に溢れている。
そしてそれに集まる呪詛は日に増して行く。
「あの子達に届かなかった刃は無作為に力無きもの達へ向かう、か」
風が止む。
エルメイロスは唇だけ笑みを象る。
「何かが始まるのかな。いや、何かが終わるから、なのかな?」
独り言に返すものはなかった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今後とも、どうぞよろしくお願いします。
エルメイロスは何をどこまで見つめているのだろうか?
そしてそろそろ真面目に魔王の名前いくつか考えとかないと。




