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僥倖の陽だまり

まったり年末過ごしていますが、部屋の掃除はまだ完全ではありません。

「「ぬーたん!ぬーたん!」」

僕の奥さんたちは本当に元気で可愛らしい。

ルーと言う僕の名前もちゃんと呼べないほど小さいけれど、好きなことには全力で取り組んで、失敗しても一切めげない強さがあって。

「ぬーたん!ぼ、く!できたー!」

メルは泥の彫像の様な格好で万歳している。

「何が出来たの?ルーに教えてくれるかな?」

抱き上げると、ネルも万歳をして抱っこを要求する。

こちらもメルに負けず劣らず泥の彫像だ。

「どろんこおよぎできたよ!」

「ネーも!できたよ!」

2人は如何に泥んこで泳ぐことが難しいかを力説してくれる。

泥の中で泳いで進むことの難しさと試行錯誤の結果編み出した泳ぎ方を教えてくれる。

言ってしまえば、腹ばいにのたくっていただけなのだけれど、二人には世紀の大発見であり大成果なのだ。

まだ小さくて世界を知らないから、どろんこ一つで大喜びなんだろうけど、世界を知ればもっと色んなことに飛び込んで行くのだろう。

楽しみにしているけれど、勿論それはとても喜ばしい事であるし素晴らしい事でもある。

そんな事を思っていた、二人が4歳頃の頃を思い出した。


「「ルーたん」」

二人は今は12歳。

お出かけから帰ってきて、僕を見つけて嬉しそうに駆け寄ってくる可愛い奥さんたち。

「どうしたの?可愛い僕の奥さんたち」

勢いよく腕の中に飛び込んできて、二人はきゃっきゃっと無邪気に笑う。

「ルーたん!見て見て!泥団子作ったの!すっごく綺麗に作れたの!」

ネルが大事そうにポシェットからまん丸の泥団子を出して見せてくれた。

「メーも!すっごく頑張ったんだよ!」

メルもポシェットから泥団子を取り出して見せてくれた。

「泥んこ遊びの天才だね、僕の奥さんたちは」

「「えへへへへへへ」」

嬉しそうに笑う二人は、かつてと寸分違わない。

「あ!ベールーデーアー!みてー!」

「みーてー!」

ベルデアを遠目に見つけて、メルとネルは大きな声を張り上げて駆け出していた。

父の系譜には存在していない奇跡そのものとなる存在の二人。

未だ父は沈黙している。

見てはいるのかもしれないけれど、この世界に零れ落ちたのか、訪れたのかまではまだ分からないけれど。


「メル様ネル様!泥だらけではありませんか!?

今すぐお風呂でお綺麗になさいませ!」


ベルデアが女官たちを呼び出した。

「きゃー!お風呂は後でー!」

「ゆうたんにも見せるの!」

「ゆうたんにまだ見せてないからー!」

「なーりーまーせーん!!」


追いかけっこが始まった。

緩やかだけれどもめまぐるしいこの時間。

ずっと続けと思わずにはいられない僥倖そのものの。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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