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泣き虫王子

邪魔されまくりで、なかなか書けず。

魔法の指輪は、おとぎ話の中に描かれ、かつていくつもの国を滅ぼしたとされる魔神が封じられていた。

強大な力を持ち人間を蹂躙し尽くした残虐な魔神が指輪に封じられる逸話は、数千年の時を経ても未だに根強く語られている。

魔神は財宝好きで、指輪に封じられても財宝を大事に保管していると言う。

封じられた魔神は、指輪の持ち主に従うように術で縛られて、指輪の持ち主は無尽蔵に願いを叶え欲望のままに振る舞い、破滅していく。

いつしか災いを呼ぶとして、炎の精霊を祀る地下神殿に指輪は納められた。

地下火山の洞窟は、もう長年手入れをされていないため、指輪が納められた奥神殿まで辿り着けることはない。

建設されたのは、まだ地下火山は奥神殿よりもさらに奥の谷底にのみ、真っ赤な溶岩をちらりと覗かせていた程度だったのだが、数千年の時間経過の間に活発化し、洞窟入り口付近まで灼熱地獄だ。


洞窟と神殿、そして魔神の封じられた魔法の指輪を管理するサーハは、王族の成人の儀に、男子を洞窟へ単身向かわせる。

名目は、魔法の指輪を取りに、ではあるが。要は度胸試しのようなもの。

中に入り熱さに耐えられなくなれば出てきて良いのだ。

本当に指輪を、取りに行けば命はない。

取りに行くフリで良かったのだ。


そう、サーハの第三王子アラハナンは、三兄弟の中で一番臆病で気弱で、おおよそ国政には向かない性質だった。

国王も大臣たちも、アラハナンが成人したら適当な領地を分け与え、そこに押し込めてしまうつもりだったのだ。

気弱で政治センスもパッとしなくて、もう大人に差し掛かる年齢となってもぐずる癖が抜けなかったのだ。首都から遠のかせて大人しくしてもらうのが一番だと、そう判断していたのが、まさか指輪を持って帰ってくるとは誰も思わなかった。

思えるはずもない。


指輪が安置されていた地下深くの神殿は、もう半分以上溶岩に沈んでいたのだから。

しかも指輪はアラハナンの指にはめられていた。

魔法の指輪に認められて着用できると言うことは、サーハでは何を差し置いても、王を意味した。

宮殿に戻ってきた時、アラハナンは泣いていた。

せっかく見つけたお嫁さんにフラれたと。

それから7年ばかりが過ぎて尚、アラハナンは正妻の座を埋めてはいない。多くの姫を娶ったが、皆一様に側室だ。

どんな美姫でも、強国の後ろ盾を持つ姫でも、決して正妻になることを許さずに。

政局や外交が荒れると思われたが、指輪持つことで多くの反発は自然に抑えることが出来た。

それほどにサーハはじめ、周辺諸国において魔神の封じられた指輪は重い意味を持つのだ。

現状、アラハナンは指輪を使いこなしていた。

些細な願いから大きな願いまで、魔神に振り回されることなく使役していた。

王としての不足分を指輪が埋めて過不足のない国家運営が成り立っていたのだ。


「指輪の魔神よ、私の心からの願いを叶えておくれ。

あの可憐な双子のメルとネルを私の花嫁に、正妻にしておくれ」


「残念ながら不可能です。

ワタシよりも高位の存在の加護があり、ワタシの魔法の及ぶ事が叶いません。

どうぞ、他の願いを………」


もう、7年の間に何度も繰り返された、アラハナンと魔神の会話である。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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