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嫁には出しません。婿もいりません。

1日あいてしまいました。


「ゆうたんゆうたん」

「ゆうたんゆうたん」

いつ頃からか、メルもネルも俺をそう呼ぶ。もう俺の名と定着しているのだろう。確かに「ゆうたたま」では長い上に呼びづらいだろう。

歌うように双子の主人あるじたちは俺の名を呼び、じゃれついてくる。

俺は二人の好きにさせながら、頭を撫でたり時にひっくり返しては相手をする。

「どうした?先程、母に呼ばれて行ったのではなかったか?」

大体にして、主人あるじたちが母である女王に呼ばれるときは、何かやらかした後のお説教と言うのがほぼお約束と化していたため、当然のように尋ねたのだが。

少々意外な返答が返って来た。

「なんかね、僕たちと結婚したい人がいるんだって」

「お前たちの年頃ならそろそろ縁談の一つや二つ舞い込んでも不思議ではないな」

嫁に出す気も婿を迎えさせる気も無いが。

エスレッラも、それは承知しているだろう。

では何故、主人あるじたちを呼んだのか?


「えっとねー、サーハの王様からなんだって。お付き合いもないのにどうして?

あなたたちわかる?てお母様がお聞きになられてねー」

普段は砕けた口調だが、事王室や政務、母に関した事柄には多少言い回しが丁寧になる。双子への母エスレッラの教育の賜物だろう。

その内、場面や立場それぞれで言動などをしっかり使い分けていくのだろうな。子供の成長は見ていて楽しいな。

ついこの間まで、主人あるじたちはまだオシメも取れていなかったのだから。ほんの少し前だと言うのに、今はこんなに成長して、目を離すと世界の裏側まで遊びに行ってたりもする。

この辺はエルメイロスが噛んでたりする。幼少期はアレがよく連れ出していた。

今は、エルメイロスから教わった移動魔法で、双子は自由に世界を飛び回っている。

「次元越えは、まだ教えてないよ」

と、さわやかな風の覇王の顔が浮かぶ。

当たり前だ!

あの勢いで次元越えなどしてみろ、戻ってこれなくなるだろうが。

メルとネルは兎に角、勢いだけで動き回る。まだこの世界軸にとどまっているから、多少の放任をしているに過ぎない。

次元越えなど覚えてしまえば、いらぬ羽虫が増えてしまうではないか。

けれども、俺は予感している。

双子の自由を奪えるものはないのだ。この俺ですら、きっと楔一つにもならないだろう。

だからこそ眩しく愛おしいのだ。

自由であれ、大きく育て、大きく羽ばたけ。そう願い思うのだ。


しかし、誰かの手に落ちるのは、面白くないな。

「サーハか。確かに、このトランから見れば離れているな。国交もないのも頷ける程、人には遠い距離だな」

呟くと、双子はクスクス笑う。

「あのねーあのねー、サーハの王様は知らないけどね。メーとネーね、五歳の時行ったのよ!エロロに教えてもらった魔法で飛んでったの!」


ああ、やはり。


「砂漠のどまーんなかでね、泣いてるお兄さんがいてね、どうしたの?て聞いたらね、炎の洞窟に魔法の指輪を取りに行かなくちゃいけないって。

でも一人で行くのは怖い、死んじゃう、て泣いてたの」


なんだそれは。

と言うか、5歳児に泣いて説明したのか?


「お兄さんとは、どれくらい年上だったんだ?一つか?二つか?」

「んー?成人の儀って言ってたから、16歳?」

メルが思い出しながら話して聞かせる。

ふむ、炎の洞窟に魔法の指輪、か。


「確か、サーハの王族の成人の儀だね。

洞窟に入って生還したら成人として認められる。

指輪は取れなくても良いんだよ。でも、メルもネルも手伝ったから、指輪取れちゃったんだよね」ひょっこり現れたのはエルメイロスだ。


「「エロロー」」

「はいはい、君たちのエルメイロスだよ」


ニコニコと人の良さそうな笑顔で現れた風の覇王は、今の話題にきちんと乗ってくる。

いつから聞いていたんだ。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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