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愛すべきもの

サクサク進めたいけれど、なかなかお風呂まで進めないです。

「我が君、湯浴みの支度が整いましてにございます」

ベルデアが霧の様に姿を現し俺に告げる。

そうかそうか、では主人たちを風呂に入れて綺麗にしてやらねば、と俺が頷くより先に反応したのはルーだった。

「やあ、ベルデア。久しぶりだねぇ」

俺の主人たちを腕にしっかり抱えたまま、俺の部下に話しかける。

「この子達と僕も契約したんだよ。あ、まだ返事はもらってないけど。だからね、僕がこの子達を洗うから」

返事をもらっていないなら、まだ契約は成立してはいない。

そう、まだ、双子達はルーとは契約完了していないのだ。何を勝手なことを、風呂に入れるのは俺に決まっているのだ。

俺の主人たちなのだから。

「正式に俺の契約主で、俺の主人だ!まだお前のでは無い!」

「ん?この子達泣き疲れて眠そうだよ。早くお風呂に入れて綺麗にしてあげよう」

俺の話を完全にスルーするルーに更に言い募ってやろうと思ったところで、視線を向ければ確かに鳴き声の勢いは無くなり、ベソをかきながら揺れている。

仕方がない。俺の最も優先する事項は、主人たちの事だ。

「ベルデア、案内しろ。

それと、この部屋の王妃の世話と護衛をつけてやれ」

苦痛から解放され、双子の母である王妃は今目を閉じて深い呼吸で意識を眠りへと沈めている様子。このまま一人でこの部屋に置いておく訳にはいくまい。

「は、適任の者を配置いたします。テア」

「ここに」

ベルデアの呼び声に即姿を現したのは、ベルデア配下の一人だ。

「話は聞いていたな?

この女性の世話と護衛は任せる」

「承りましてにございます、ベルデア様」

感情のこもらない表情で返答し、行動にすぐ移った。ベルデアはそれに1つ頷いてから俺たちに向き直る。

「お待たせをいたしまして、申し訳ございません。

こちらでございます」

城内の掃除も粗方終わっていそうだ。歪んだ死の気配が色濃かったのだが、大分薄まってきているのを感じた。

しかし、死んだ城だなここは。腐臭はかなり薄まっているが、どうもぬぐいきれない。

主人たちを風呂に入れて寝付かせたら捨てるとしよう。

長らくまともな手入れもされていなかったのだろう。幼い主人たちがどんな目にあっていたかと思うとふつふつと腑が煮える。

どの世においても、真に純粋な存在は愛され守られるのが必定なのだ。この扱いは許されぬ。

ルーの腕の中でもうそろそろ本格的に寝落ちしかけている主人たちを見つめる。

ああ、名すらまだ交わしていない。

魂そのものの契約を交わしたのだから、この世だけの名など大した問題ではない。

俺はこの二人にとって勇者ゆうたたまであるのだから。

今はそれだけで良い。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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