存在の選択
ハイロの話もう少し続きます。
てか、都市の名前なんだっけ?と既に忘れてる。
ハイロはとっても悪いことたくさんしたんだって。でもお仕事だったからさばかれなかったけど、さいごにしたお仕事がお家そう動がらみで、政局をみあやまったから、トカゲのしっぽ切りされたって言ってた。
名前もなくて、殺したりだましたりばっかりのお仕事だったけど、トカゲのしっぽになって良かったって、ハイロは言うの。
わたしにもメルにも言うの。
あ、ハイロって名前はわたしとメルが考えたの!
ハイロはね、本当は人だったけど、私たちのお人形になって、たくさんいっしょにあそんだりしているうちに、何でか人じゃなくなってた。
ハイロは、おめめもお口もお手手も使えなくなってたんだけど、人じゃなくなったら、おめめ見えるようになって、舌も喉も治って丈夫になって強くなった。
わたしたちとキャンプしてる時におそってきた魔物を食べたんだって。
そしたら、そうなったんだって。
おてては生えてこなかったみたい。
でも、おててなくてもハイロは強いからいいか。
嬉しい時とか甘えたい時は、スリスリほっぺたしてくれるし。
ぶら下がったら運んでくれる。
いっしょにかけ回ってくれたし、楽しいからもんだいない。
今はお仕事でいつもいっしょじゃなかったりするんだけど、お手紙くれるし気にしない。
困ったら、名前を呼んだらきてくれるって言ってたのよ。
おかしなくて、おなか空いて、切なくて、今困ってるのよね。
「「ハイロー!おなか空いたのー!ハイロー!!」」
メルと手をつないだまま、大スラム都市の空に向かって二人で叫んでみた。
「ハイロきてくれるかな?」
「こなかったら、森に行く?」
「やだー。メルは森ばっか言うー」
「だって、ここじゃ食べものないもん」
つないだ手をブンブン振り回してたら、スッと暗くなる。
誰かが背後に立って、わたしたちを影に入れたから。
「来たヨ」
夜色の髪の毛と、夜色の目隠しと、ハイロは双子を見下ろして到着を告げた。
「ハイロー!ハイロだー!あのね!あのね!」
「ハイロー!だっこー!」
「ネーも!ネーも!」
二人はハイロを確認すると表情を明るくして、飛びつきしがみ付きぶら下がる。
「どうしたノ?」
「あそびにきたの!わるものたいじ!」
「かわいい女の子がいてねー!さらわれたからたすけたの!かわいかったのよ!」
「でね!でね!あのね!」
「うん、うん、髪の毛まで染めてきたノ?叱られナイ?」
「「変身なのよ!」」
双子は大興奮である。
ハイロは二人の大のお気に入りのお人形なのだ。双子にとって、お人形さん=お友だち=大好きな人。となるので、久しぶりに会った為、ハイロに飛びついて甘えている。
「そうカ、おうち抜け出してきたんダネ。おやつの時間前ダッタから、お腹空いてしまったノカ」
「「そうなの!」」
ハイロはゆっくり頷いた。
「お菓子はそんなにないケド、少しつまむものならあるヨ、クル?」
「「行く!!」」
また、頷く。
「ナラ、しっかり掴まってテネ。行くヨ」
ヨ、と発した時には地上にハイロは足をつけていなかった。
双子を連れて跳躍し、眼下に大スラム都市を見ている宙にいた。
「「きゃーっ、すごーい!」」
双子、大はしゃぎである。ハイロも笑う。彼女たちが喜ぶなら彼は何でも良いのだ。
高く跳躍し、落下し着地を三度するとハイロの仮宿に辿り着いた。
双子は当然のように振り落とされることもなく、常人ならば命を落とす上下運動を楽しんで喜んでいた。
「ついたヨ、食べたら、送るカラ」
「「えー!?」」
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