可愛いゆうたたま
視点が魔王に移ると流れが緩やかになる気がします。
主人たちとのおでかけにお土産ができた。
「たいのたいのぽーい」
「にゃいにゃいのー」
泥だらけで疲弊しきった少年と、ほんの少しだけ主人たちよりも年長の幼児三人。
メルとネルが必死に行きたがっていた方角で発見された4人の子供達をエルメイロスが見つけて連れて帰ってきた。
「ほら、君たちの欲しがってたのこの子達でしょ?」
欲しがってたのとは、少し違うと思うがな。
エルメイロスは胡乱な俺の視線を受け、何故か楽しそうに笑みを返してくる。
「エロロちゅごーい!」
「エロロしゅごー!」
「エルメイロスだよ、名前勝手に変えないで」
主人たちの賛美を、呼ばれた当人は迷惑そうにしている。
「エルメイロス、ほら、言ってごらん」
「エルロルス!」
「エロロロロ!」
「はいはいはいー、原型留めてないのはどっちの方?
エルメイロス!
はい、はい、言ってごらん」
「「えりょょよをむしゅ!!」」
「遠くなったねー、エロロで良いよ」
「「エロロ!」」
俺の主人たちは、最高かもしれん。
「新しい名が出来て良かったな」
言ってやると、肩をすくめる。
「ゆうたたまに勝ることはないから安心してよ」
「お前に呼ばれる謂れは無い」
「双子だけのゆうたたまだから?
君の名前ってどれも呼びにくいからさ、もうこれが新しい名前で良いんじゃ無いかな?
親しみやすくて、とても良いと思うよ」
プッ。とルーが噴き出す。
お前なー。
「彼は初めての主人に呼ばれたものを独り占めしたいんだよ。
こう見えて実は甘えただからね」
んな!?
「存じております。有名ですから」
ゆ、有名だと!?
「僕の父さんの大のお気に入りだしね。みんな知ってるよね」
ね?
ルーが俺の顔を覗き込む。
「ふふ、照れて怖い顔しても、すぐ分かるんだよ。君って可愛いよね」
「ぐ………」
「ゆうたたまかあいー?」
「ネーもかあいー?」
「メーも!メーも!かあいー!」
「「ゆうたたまかあいーねー!」」
俺の周りを上機嫌に主人たちが駆け回る。
今は帰路の空路。エルメイロスの風の中。
主人たちが可愛らしいので、まあ良いか。
土産の子供達は戻ってからで良い。
何があったのか、訳知り顔のエルメイロスは語らない。
大変な目にあって、生き延びた、て感じだね。とはニヤニヤ呟いていたか。
日もかなり傾いて、夕暮れだ。
はしゃぐ主人たちの体力が切れるのも、もうすぐだな。
帰ったら速攻で風呂か。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。




