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双子の悪夢と魔王の現実

投稿したと思ったら夢だった?!

再投稿し直しです。

昼間は駆け回り、元気いっぱいで遊びつくしたメルとネルは、日が沈むと駆け足でお風呂夕食歯磨き寝かしつけ、と駆け足でベッドへ送られる。

その日も変わらず、周りの大人たち全てを翻弄し魅了して遊んでいた。

夕刻以降も特に変わらず、体力を使い果たして眠りについた。

城内は安全で安心できる環境に完全に作り変えた。

そう、その筈なのにメルとネルの絶叫が響き渡った。

尋常ならざる叫びは、まるで断末魔の様に聞こえた者もいた。

俺が駆けつけた時、双子は我を失い叫び続けていた。

呼びかけるも、俺の声も聞こえておらず、見えていない。

「メル、ネル。どうした?俺が来た、何も心配はいらん」

二人に語りかけて抱きしめる。

ピタリと絶叫は止んだ。


「たいのーたいのー」

「たちけて、たいのー」


叫びすぎて掠れた声で二人は泣き始める。


「どうしたんだ?怖い夢を見たのか?」

「悪夢でも見たの?」


いつの間にか現れていたルーが俺の腕からメルを受け取る。

双子は目を閉じたまま、いたいいたいと泣いている。


「どこが痛いの?」

「たいのーおててとれたのー、うえ、うえーん、お指とらないでーやあのーやあーのー」

メルが癇癪を起こして暴れて泣いている。

ルーは優しく揺れてキスを何度も落としながらなだめていく。

何度も引っ掛かれてはいるが気にしていない。


「ぽんぽんやあのー、うってしちゃやーの!うええええええん!」

ネルももがく様に暴れている。夢を見ているのか?

目は閉じたまま、二人は泣いて暴れる。


二人は間違いなく悪夢を見ている。

「どんな夢を見ているの?ルーが食べてあげるから」

メルを見つめて呟くと、ルーはそっとメルの額に口付ける。

それに習う様に、俺もネルの夢を見ることにした。


夢に潜る。

夢の中は、血の匂いで溢れかえっていた。

幼児の見る夢ではないな。この城での体験が見せるのか?

そう思い、夢の中に俺は意識を降ろす。


どことも知れない場所。

劣悪な衛生環境、そして死体の山。

死体は全て子供のものだ。

全ての死体は拷問を受けた痕跡が見て取れる。

「酷いね」

ルーの声に視線をやれば、表情のない顔が、悲惨な光景を見ている。

「君もここまで悪趣味じゃないのにね」

それはフォローなのか?


「ぐっ、ぎがぁっ!が!がぁあ!あ!あぎゃあ!」


押しつぶした悲鳴が聞こえる。

山と積まれた死体の向こうだ。


どん!

と肉切り包丁で指を落とされる。

『やあのー!やあのー!めー!めーなのー!』

皮を刃物でひかれていく。

『やあー!!やあー!!たいのー!!!』

生きたまま解体されていく子供と、それに重なり叫ぶ双子の声。


「あそこにいるね」

「ああ、囚われたままか?」

トラウマからの悪夢だと思ったが、一瞬でその思考は吹き飛ぶ。

『ゆーた、たまー、たちけてー』

『ゆうたたまー、ちゃいのちゃいのぽいちてー』

俺を呼んでいる。


双子の夢の中、俺を呼ぶ意識の波に夢が変化する。

全身皮袋の様なものを被り、返り血と脂で汚れきったものが、子供を解体して包丁をダン!と

死体を生産していた台に打ち付けた。

『ぐおおおおおおおおおがああ!!!!!』

獣の様な咆哮を上げて、俺とルーに敵意を向ける。


ふん、ただの夢ではないか。

「双子は連れて帰っておくよ」

ルーはさらりと美味しいところを持っていく。


「僕の双子たち、可愛い奥さんたち、迎えに来たよ、帰ろうね」

『ふぇえ、ぬーたんぬーたん!だっこ!』

『だっこーおててとれたのーやあのー!』

悪夢として、その場に縫いとめられていた双子の意識をルーが光で開放する。

「良い夢を見ようね、怖い夢はいらない。

美味しいおやつ食べようね、甘いクリームたくさんの。

良い子だね、ルーがそばにいてあげる」


双子の意識とルーは早々にその場から立ち去った。

俺は置いていかれたわけだが、まあ、これでいい。

ここは、子供のいる場所ではないし、ルーも長居して良い場所でもない。

苦痛と恐怖と悲鳴と汚濁が渦巻く悪夢の様な現実。

ここは夢の中ではない。


双子が夢として見ていただけの、現実の世界。


凄惨な死を迎えさせられた子供達の慟哭が空間に皮袋響き渡っている。

双子が城で上げた絶叫と同種のものだ。

あの声は双子のものではなく、ここの殺された者たちの声だったのだろう。

双子の肉体を通じて、あの発露を見せた。


主人あるじたちの意識をここにとどめた故か」


「グジュグジュグジュ!ぐじゅ!」


皮袋?肉屋の格好に酷似しているが、顔は目鼻を無視した大きな亀裂を見せている。

魔物に、お前の様なものは本来居ないんだがな。

人間の恐怖心をやたら煽る化け物が時々見受けられる。

目の前のこいつもそのうちのひとつだろう。


「許せんな」


双子が泣いた。

俺を呼んで泣いていた。

理由はそれで十分だ。


「あるべき姿に戻れ化け物」


見え感じるままに目の前の不自然な存在の繋ぎ目の糸を引き抜く。


どぐちゃ!


化け物は勝手にほつれて分解され、肉塊になった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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