なんか、違う
一文字違うだけで、エライことに。
子供が小学校に入ったので、学童保育のお世話になることになった。
近頃、物忘れやうっかりが多いばあちゃんが、申し込みがもう始まっているよと焦ったように言ってきたので、ちょっと早いんじゃないかといぶかった。
「何言ってるの。申し込みが始まっているし、いつ満員になるかわからないんだからね。早く申し込んでおかないと困ったことになるかもしれないじゃないの」
むきになったばあちゃんは手に負えない。
本当はわたし自身が学童保育を探し、下見をし、申し込もうと思っていたのだが、その権利を強奪されるように、ばあちゃんが動いてしまった。目隠しイノシシの如く、ばあちゃんはその日のうちに、学童保育に申し込みをしてきてしまった。
「上下関係や、覚悟のある人間を育成する、優れた学童保育らしいわよ」
ばあちゃんはそう言った。
(学童保育で、そんな運動部みたいなところ)
わたしは首をかしげたが、まあ、申し込んでしまったならいいか、仕方がない、と思う事にした。
小学校に入り、早速学童の世話になる。
お迎えはばあちゃんの担当だから、わたしはほぼ学童保育にはノータッチでいた。
申し込みから色々な煩雑なことを引き受けて動いてくれるのだから、なんだかんだ言って、ばあちゃんは貴重。
ありがたいことじゃないかと、仕事と家事に追われる生活の中で、あっぷあっぷとわたしは思うのだった。
ところが。
家に帰って来てから、お人形さんとおままごと遊びをしている子の語りが聞こえて来た。
「姉御。このオトシマエは、この指を詰めさせていただくことで、つけさせていただきやす」
小指をぴんとたて、正座で頭をさげている。
「姉御」役のお人形の前で、なんだかものものしくかしこまっているのだ、うちの子は。
さらには。
クマのぬいぐるみに向かい、胸倉をつかんでゆすぶりながら、
「おうおうおう、覚悟はできているんだろうな」
やたらに凄みを持たせて言うのである。
これはただのおままごとじゃない。
一体誰に習ったのか。
(学童にはいろいろなお兄ちゃんお姉ちゃんがいるもんな)
「まみちゃん、そんな言葉、誰が教えてくれたの」
夕食づくりの合間に、ヘンテコままごとに熱中する子に聞いた。
鼻づまりのせいで、滑舌がいつもより悪い子は、こう答えた。
「うん。ゴクドウホイクの先生たちが、毎日こんなことしてるんだよ」
極道保育?
学童保育を早く探して申し込まなくちゃ、待機児童になったら大変、と焦るあまりに、なにか違ったところに申し込みをしてしまったんじゃないのか。
おばあちゃん。
(まさか)
「奴らに、目に物見せてやりましょうぜ、姉御」
居間では、玩具のフランスパンを、まるでドスを握るかのように掴んで立膝をつき、子が叫んでいた。
「姉御」役のお人形さんは、目をぱっちり見開いたまま、おぎょうぎよくお座りをしている。
明日、仕事を早退し、子が通っているという学童保育を覗いてみようと、わたしはこわごわ、決意した。
ちゃんと自分の目で見て、決めたいものです。