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第八十六話 「親指を立てて」
あの時もそうだった
タロちゃんは、一人だった
このホールで一人になれる場所、
そこは一つしかない。
駿はステージの方に歩いていき、
ステージの裏側を覗いた。
数人の裏方の生徒がいる中、
太郎の姿は見当たらない。
するとそこに美名城が来た。
来るなり上を見上げて
「どう?」
と話しかける。
「え?」
と駿はつられて上を見上げると
そこには鉄柵に腰かけて
親指を立てている太郎がいた。
「タロちゃん!」
駿が驚いて太郎の名を呼ぶと
再び
親指を立てて笑顔を見せる太郎がそこにいた。




