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第八十一話 「対等な舞台」
美名城の一言に
菊池と孝也は納得していなかった。
「何よ。
タロちゃんのこと分かったようなこと言っちゃってさ。」
「まったくだ。
美名城先輩は何も分かっていない。
彼が平民で俺が」
と孝也が続きを言いかけた瞬間
「将軍だ、だろう」
「駿くん??」
八千草が心配そうに駿の方を見つめた。
「孝也は一体誰と戦っているんだ?」
「何?」
「美名城夏帆の元カレと噂される月嶌葵か?
それとも平民の佐藤太郎か?」
駿は続けて
「俺たちは言うまでもないが仲間だ。
そして今は体育祭で優勝するために美名城先輩を筆頭に
みんな協力して取り組んでいる。
タロちゃんは少なくとも
俺たちとは違う班で一人でできることをやっている。
美名城先輩の言う通り月嶌葵は関係ないだろ。」
「何が言いたい?」
「噂に行動が左右されるようでは、
俺たちは月嶌葵とも、
タロちゃんとも
対等に戦える舞台に立てはいない。
今、美名城先輩は試したんだ。
俺たちが噂に左右されるのかどうかを。
まだ間に合う。
俺たちにしかできないことをやろう。」
「駿くん・・・」
八千草が駿を不安そうに見つめる目が
少し優しい目と変わっていた。