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第六十七話「崖の人影」
菊池だけではない。
駿、八千草、そして孝也と
ここにいる全員、
先が読めない展開に目が釘付けになっていた。
カヌーから
何かを海に投げて海水になびかせている。
それは一見
菊池が言葉にした網掛け漁のようにも思える。
しかし、
小型船ならまだしもカヌーで海辺の漁は聞いたことがない。
無論見たこともである。
海に何かをなびかせていることに、
駿と八千草だけでなく
菊池と孝也も海上絵の可能性を疑いだしていた。
「ありうる、
海上絵ありうるかもしれない!」
菊池はそう心の中で思いながら
空を見上げると、上の崖辺りに誰かの人影が見えた。
一瞬だったため、
誰かは分かっていなかった。
だが菊池は
「誰かが崖から様子を見ていた・・・
ってことはやっぱり
上から見たときの光景によって
何かメッセージを送っている可能性もある。」
海上絵の疑いは
確信へと変わりつつあった。