第六十話 「侍として守るべきもの」
その後、孝也は太郎に距離を置いていた。
反逆者として・・・
恋敵として・・・・
駿は基本的に孝也と行動を共にしていた。
駿は孝也を説得したかったが、
人の心を読むのにたけていただけに
そう易々と気を静めてくれるほど
穏やかな気質ではないことは
重々承知していた。
世の常として
侍は将軍をお守りする立場にある。
駿は打開策を考えていた。
すると八千草と菊池が様子の変化を察し、
駿に現状を問い詰めていた。
「大体の話は分かった。
ようするにタロちゃんに孝也が
嫉妬してるってことでしょ。情けない。」
強めのリアクションをする菊池に駿は
「そういうことにもなるけど、
きっとプライドが邪魔してるんじゃないかな。」
「え、プライド?まさか将軍としての?」
「いや、それよりも、孝也、
将軍は誰よりも美名城先輩のことを
尊敬していたし、高嶺の花だった人が選んだ相手が
仲のいいタロちゃんだったってことに。」
「何それ。やっぱりただの嫉妬じゃん。
もし仮にそれが男としての
プライドだっていうんならバカらしいわね。」
八千草が
「まぁまあ、きっと他にも理由があるんだよ。」
「他に理由?ないわよ、
将軍、いや孝也の考えそうなことだわ。」
駿が重い口を開く
「実は僕に考えがある」