第五十六話 「疑われる始末」
「ねぇ、私の眼は正しかったでしょ」
「だいび序盤でバテてたけどな・・・
夏帆が男を連れて来るなんて、
あいつ以来になるか・・・」
「そうね。
まぁ彼は連れて来たわけではないけど・・・」
「そうだったな。
俺にはあいつとそっくりに見えるんだが」
「どうかしらね」
学校に戻ると
すでに今日の看板チームの作業は終わっていた。
美名城先輩と出会って
色々あったことを頭の中で振り返りながら
荷物をとりに教室へ戻ると、
そこには孝也が腕を組んで座っていた。
「あれ、一人?
どうした、考え事か?」
「どうしたもこうもない。
何か報告することがあるんじゃないか。」
一体何を報告しろと言うのだろうか。
「報告?」と首をかしげると
「さっき美名城先輩とタロちゃんが二人で
学校を出るところを見たんだってさ」
突如後方から駿が事情を語った。
「そういうことだ。一体どういうことなんだ?」
孝也、いや将軍様がご立腹であるようだ。
駿が太郎に聞こえるように
「孝也が崇拝してやまない美名城先輩だからね」と
告げ口した。
「てっきり看板チームで
準備に勤しんでいるのかと思いきや、
あろうことか、かの美名城先輩と外出とは何事か?」
太郎はこのとき
面倒ごとには巻き込まれたくないんだが、
真実を説明してやらないと
この先もっと面倒ごとになりなりそうなことを察していた。
「あれはな」
そう言いかけた瞬間、
「タロちゃん、さっきはありがとね。
デートみたいで楽しかったよ。」
空気が凍った。