第五十一話 「パードゥナー」
「先輩、帰りましょう。」
最悪の事態を想定して言うと
「タロちゃん何言ってるの?
ほら、おじさんこっちに気付いて近づいてきてるよ♪」
そうも穏やかにワクワク感を出して言われると
こちらとしても調子が狂わされる。
「先輩、
あれはおじさんじゃないですよ。
若者ではありませんか?」
「大丈夫よ、心配しないで。」
いや、そう言われてもね。
「私たちより年上なら
若者もおじさんも同じよ」
とんでもなく強引な解釈だ。
今すぐ逃げた方が
身を守るためには正しい選択だろうが、
美名城夏帆と一緒にここまでついてきてしまった以上、
男として覚悟を決めた方がいいのかもしれない。
そして、・・・ヨット乗りが海辺に到着した。
「おうおう、誰がおじさんだって?」
やっぱり聞こえてたのかーー
「あなたをおいて他にいないわ」
美名城夏帆――。頼むからこれ以上口を開かないでくれー。
「俺はまだ二十代だぞ」
「あ、思ってたよりおじさんだ」
・・・・口がすべってしまった。最悪だ。
美名城夏帆の勢いで
俺まで開いてはいけない
心の声を口にしてしまった。
生きた心地がしない。
「ふははは」
ヨット乗りは笑い出した。
頭にきておかしくなったのだろうか?
恐る恐る
「どうかされました?」と尋ねると
「どうされましたもこうもないよ。
君は選ばれたんだ。」
・・・・選ばれた?何がなんだか・・・
「夏帆のパートナーに」
「あ~、美名城先輩のパートナーね。
・・・・Pardon!?」