第三十六話 「菊池の役職」
「え、俺の背後?」
振り向くと
そこには
菊池さんが立っていた。
後ろにいたことに気付かず驚いた俺に
「先ほどはどうも。
ねぇ佐藤、耳を澄ましてみて。」
と唐突に両手を俺の耳に当てた。
この状況は一体全体
何が起きているというのか。
菊池さんが俺の目の前で
目を優しくつぶって
両の手を耳に当てているではないか。
普段は四分音符で刻んでいる
俺の心臓リズムパターンは(バク バク バク バク)
この瞬間に限り十六分音符へと加速した。(バクバクバクバクバクバクバクバク)
「どう?私の直感が
佐藤たちについていきなさい
って言ってるの、聞こえる?」
「・・・・・・・・・・」
正直自分の加速した
心臓リズムパターンを
刻むのにやっとで、
何も聞こえてこない。
ここは正直に
いや
・・・・・・・何も聞こえ」
「だから私も一緒にお昼食べるね。
ダメかな?」
聞こえる?
という菊池さんの俺に対する問いに
俺が答える間も与えてもらえないまま将軍の孝也が
「断る理由がない。大歓迎さ!!」
と迎え入れた。
孝也は女子のダメかな?発言に弱いのが
八千草の一件と合わせても見てとれる。
まったく
将軍でありながら超が付くほどお調子者だ。
こうして菊池が
仲間になった・・・のだろうか。
菊池は自ら
「私は女だけど
咲苗みたいに女の子
っていう性格でもないから、
咲苗と同じ嫁見習いじゃなくて
若草が侍なら、その見習い、
つまり侍の一番弟子でいいや。」
待て待て、平民と言う
選択肢はここでもないのか。
平民の人気のなさを感じるのは
俺が平民をやっているからだろうか。
というか八千草は
侍の嫁の見習いで、
菊池は侍の一番弟子?
なんかややこしい。
どいつもこいつも
侍名乗ってたら
将軍の孝也がさすがに怪しむぞって、
菊池が加入した嬉しさで
その事実に気付いていない。
今はそっとしておこう。ってか
八千草も菊池もダンスチームだ。
この後も一緒とか・・・
駿はほんと人気者だな。
駿本人はいつもの愛想笑いかましてるけど。




