第二十八話 「俺じゃ・・・ないの?」
真千先生の低音の声が聞こえてきた。
ああ、
そうだとも。
俺は今
寝ようとしている。
抗ったところ
結局のところ
眠たいままでは、
講習の内容も頭に入ってこないんだ。
いや、
そもそもクーラーをかけて
ちょうどいい快適さ+夏休み中
という眠気を引き起こす
ジャブ&ストレートが俺をKOさせているだけなんだ。
KOされても起き上がれなんて
文化系の俺には合わない。
言い訳はいくらでも思いつくが、
講習中の居眠りを
真千先生相手に論破できる理由は、
残念ながら俺の力を持ってしても
見つけ出すことができない。
仕方ない、降参だ。
まだ肩を三回叩かれていないが起きるとしよう。
眠そうな表情いっぱいに顔を上げると
そこに真千先生はいなかった。
「ん?」
首をかしげると
左隣にかすかに
真千先生の姿が視界の中に入った。
真千先生はどうやら
俺ではない誰かに話しかけている。
隣を振り向くと
少し離れた同じ列の女子がいる。
その女子は
俺の方に体を向けているが
視線はもう少し下だ。
俺も彼女同様に視線を下げると、
なんとそこにはいつもの俺が・・・
いや、
講習中にも関わらず
俺を差し置いてうつぶせで
スヤスヤと気持ちよさそうに寝ている者がいた。
「ウソダロ・・・」