第二百九十一話 「お手伝い失格の危機」
美名城と鳳凰院が帰る際に
お手伝いの流川は
美名城と鳳凰院と八千草美悠が
三人揃って立って話をしている様子を見て、
「こうして三人のお嬢様が話している姿を見るのも久しく感じますな」
と昔の面影と照らし合わせて懐かしく感じていた。
こうして八千草家での応急処置が終わり、
流川から先ほどの話の続きを聞いていた八千草美悠と咲苗。
美悠が事の発端を整理しようと
「つまり、
タロちゃんは昨日から早苗ちゃんを
寝かしてあげようと膝枕してあげていたところを」
「タロちゃんに膝枕してもらっちゃった・・・」
照れくさそうに話を聞く八千草咲苗
「流川が勘違いをして
ほうきで本気で斬りつけに行ったってことね。」
「おっしゃるとおりです!この流川、切腹してお詫びを」
「もうそんな子ども染みたマネはやめてください。」
「子ども染みた!?あ、はい、すみません。」
「でもまぁ、誰もけがとかしなくて良かったわ!
タロちゃんには怖い思いをさせたわけだからお詫びに参りましょうね。
早苗ちゃんも一晩甘えさせてもらったんだから一言お礼言わなきゃね。」
「はい!!」
流川と咲苗が同時に返事をする。
「そもそも私が
あの時(海満火災時)寝ていて側にいなかった罰として
休日付き合わせなければこうはならなかったかもしれないし。
まぁ、この話はこの辺でおしまいにしましょう。
もう少しだけ寝させてね。」
美悠がもう少し寝るために部屋に戻ろうとすると
「実は先ほどのお話の中で異なることがあります」
と流川が話し始める。
「え?どういうこと??」
美悠と咲苗が耳を傾けると
「実は私の斬撃は当たっていました」
「ええ?当たって、タロちゃんに??」
美悠が尋ねると
「さよう。私はあの瞬間正気を失ってしまい
咲苗お嬢様をお守りしようと本気の斬撃をほうきで打ち込み、
いや斬り込みに向かいました。私が斬り込みに向かう途中に
咲苗お嬢様はお目覚めになり起き上がられます。
もしあの時あの太郎という青年が
咲苗お嬢様をとっさに抱えなければ
私は咲苗お嬢様に大変な傷を負わせていたでしょう。
しかし、咲苗お嬢様を抱きかかえ、
身体で覆った太郎青年は咲苗お嬢様を
一身でお守りし私の斬撃を受けました。」
「流川、それは本当の話なの?」
「はい、間違いありません。
そしてこれが私が斬撃したときに使ったほうきです。」
「ええ!!嘘でしょ!!??」
流川が出したほうきは真っ二つに割れていた。
「でもタロちゃんは当たってなかったって・・・」
「それはおそらくお嬢様方に心配させないようにです」
「じゃあ、タロちゃんは傷を負っているの?」
「私はこれでも八千草家のお手伝いです。武道は一流と自負しています。
普通は意識を保つこともできません。」
咲苗は恐る恐る
「じゃあ、もしタロちゃんが助けてくれていなかったら
私は意識を失っていた・・・・」
目を開いて話す早苗に
「そうなっていた可能性も否定できません。
この流川はとんでもないミスをしました。
お嬢様を守る身のはずが、下手をすればお嬢様を危険な目に・・・
もうお手伝い失格でございます!!」
「そうね、失格ね。でも、咲苗ちゃんを守ろうとした
その姿勢は失格ではないわ。これからはそう簡単に正気を
失わないでね。けどタロちゃんは今・・・」
潤め目で心配そうに話す美悠に
「実はその件でもう一つお伝えすべき事があります」
流川が決死の覚悟でもう一つの伝えるべきことを話し始める。