第二百八十七話 「救護室での緊急処置」
休日の生徒会室で起きた事件
美名城は鳳凰院を連れて校舎を出ると、
連絡をとって待っていたお手伝いの流川おじさまが運転する
八千草家の専用車とそれに乗る八千草姉妹となぜか太郎も一緒に
落ち合い、その場を後にした。
葵は肇のシールドに手こずり、
二人の後を追ったが間に合わなかった。
「くそっ、これであのチームをまたも敵としてしまったか・・・」
美名城たちは八千草家に着くと、
急いで鳳凰院を救護室へと運び
美悠と美名城が緊急処置にとりかかった。
太郎と八千草はリビングのソファーに座って
緊急処置が終わるのを待っていた。
「いや~、普通家の中に救護室とかあるかな~」
「え?タロちゃんの家にはないの??」
驚く八千草に
「いやいや、俺んちはもちろんないけど、
そもそも救護室がある家を俺は初めて見たよ。」
「ええ、本当に?私、救護室がないお家を見たことがないよ~」
「おいおい、まじかー!!」
どんなお嬢様発言だよ。圧倒的多数の平民はあったとしても
せめて救護箱くらいで、それもポストサイズの小さいのな。
救護室って平民が持ってる救護箱いくつ入るんだよ。
八千草と太郎との常識には
かなりの開きがあることを否応なしに感じつつも
こうして二度もお邪魔して、お世話になっていることも確かだ。
何だろう。
この家にいると絶対的な安心感を覚える。
これが圧倒的な力に守られるというものなのか?
だとしたら生徒会がやろうとしていた支配は
もしかしたらこれほどの安心感を多くの生徒に与えていた・・・
いやいや、それはない。
圧倒的な力の前に犠牲を払いすぎている。
八千草家の少なくとも
八千草さんとお姉さんは誰に対してもソフトに接していて
排除しようとかそういった考え方はないんだろう。
しかし、
どうして支配を進めようとしていた鳳凰院先輩を
美名城先輩と八千草先輩は助けているんだ?
太郎はそんなことを思いながら
三十分、一時間と過ぎていく・・・
「長くなりそうだね」
八千草が心配そうに救護室の方を見つめているのをみて
ただ事ではないことを察した太郎。
「そうだね」
「タロちゃん、日も暮れてきているから帰っても大丈夫だよ?」
「あ、いやいや、もうちょっと一緒に待たせてもらってもいいかな?」
「あ、うん」
「ありがとう」
「ううん」
太郎は自分がここにいる必要性を見いだせないままも
ただ心配そうな表情をしていた八千草を
ここに一人で待たせることもできないと感じていた。
こうなったらお邪魔している身であって
処置が終わるのを待っているだけの身でもあるけど
先輩たちの処置が終わるまでは八千草さんと一緒にここで待っていよう。
ストンッ
「え!?」