第二百八十五話 「生徒会の傷跡」
長い長い恐怖と奇跡が混在した一日が終わり、
学校は休日の朝を迎える。
生徒会室には
昨日傷を負った豪と杏沙と肇
副会長の葵と会長の鳳凰院が集っていた。
豪と杏沙に関しては顔を包帯でぐるぐる巻きにしている状態だ。
普段は鳳凰院の隣で直立している秘書の肇も
昨日の疲れが残っているため、
何かを話すわけでもなくただただイスに座っていた。
意識が戻った三人から
昨日の出来事を詳しく聞こうと思っていた葵と鳳凰院だったが、
予想以上に傷は深く、また精神的なダメージも大きかった。
東日本の頂点に立つ海満高校の生徒会メンバーであることは
それだけの実力と共にそれ以上のプライドを持っていてこそなれるもの。
そのはずが・・・・
生徒会室で静かに時が過ぎていく最中、
生徒会室の扉が開いた。
扉の先に美名城が立っている。
「休みの日に緊急招集だなんて・・・
まぁ、昨日の一件で私からも話があるからいいんだけど。
・・・なんかみんな暗いわね?」
生徒会室がいつにも増して雰囲気が暗くなっていることを
直感で察知した美名城に葵が
「昨日どこにいたんだ?」
「昨日?ずっと学校にいたわよ。
え!?肇と豪と杏沙どうしたの?」
「俺たちにも分からないんだ。
肇たちがやられることも、学校が元通りになったのも
明らかに俺たち以外の何者かの仕業であること。
それもかなりのバーチャルリアリティを持つ強者。
何か知らないか?」
葵の問いに
「私は何も知らないけど、
その様子だと三人とも大変な目に遭ったようね。
それと透華も・・・どうかした?」
一言も話さない、罵倒もしない静かな
鳳凰院に異変を感じた美名城は
「まぁ、いいわ。
私はあなたたちに何があったかは知らないけど
昨日のは力を誇示するにしても明らかに行き過ぎているし、
同じ仲間だったはずのあかねちゃんを苦しめるだけでは飽き足らず、
下手したら、下手すれば命さえも奪おうとしたあなたたちは
私からしたら想像が付かないほど狂ってるわ。
人を苦しめることでしかバーチャリティの力を使えないのなら
私はこの生徒会を今から脱ける。今日はそれを言いに来たの。」
夏帆の突然の脱退宣言に
「本当にいいのか。
お前、確実に力を失うぞ。」
葵が脱退を止めにかかると
「いいわ。
私にはあなたたちとは違った大切な仲間がいるもの。
もう一つの命に未練はない。」
美名城夏帆が生徒会脱退を宣言して
生徒会室を後にしようとしたその瞬間、
「夏帆、ごめんね!」