第二百八十三話 「想定外の光景」
生徒会長鳳凰院透華と副会長の月嶌葵は
校舎入り口にテントを立てて生徒会本部を作り、
キャンプ用のイスに座って海満高校が燃えゆくさま、
生徒たちが慌てて逃げ惑うさまを見物していた。
「ねぇ、葵。
そろそろ肇たちが報告しに来てもいい頃合いじゃない?」
「そうだね~。相手は美悠だから苦戦しているかもね。」
この時葵は透華が言ったことと同じ事を考えていた。
いくら美悠とは言え、あの三人をまとめて相手にできるわけでない。
一人一人生徒会の一員で力は本物だ。
それなのにかなり時間がかかっている。何かあったのか?
「美悠相手だから肇も含めて三人行かせたっていうのに・・・
美悠はやっぱりうちの生徒会に必要な人材ね。
それか限定的に夏帆にも力を返すべきだったかしら。」
「どうだろう。
美悠はこっち側には来ないし、夏帆も美悠とは
絶対敵対視はしないだろうね。」
「何あっさり現実受け入れてるのよ。
あなたそれでも我が生徒会の副会長なの?」
「まぁ、今のところはね」
「何が今のところはね、よ。
美悠を生徒会には早く入れなさい。
それができるのは私かあなたしかいないんだから。」
「いやいや、俺に力尽くは似合わないし・・・」
「頼りないわねほんとに」
「へへっ」
「照れるなそこ!!」
鳳凰院透華と月嶌葵が美悠と美名城について
話をしながら肇たちのことを待っていると
「あ、帰ってきた!!」
葵が帰ってくる肇たちを早々に見つけた。
が、様子が変だ。その異変に葵は肇たちのところへと駆け寄っていく。
「まったく遅いお戻りのこと。
この私をここまで待たせるなんて秘書のくせに・・・
いや、美悠相手だから仕方ないわ。
今の美悠の力を聞くいい機会ね。」
って誰も聞いてないし!!
あれ、葵は?
イスに座った状態で身を乗り出して、
葵の行方を追った先に
鳳凰院が想定していなかった光景が映っていた。
豪と杏沙が肇と駆け寄った葵に肩を担いでもらって
こちらへと一歩一歩足を引きずっていた。
「え?どういうこと?
一体何があったって言うのよ!?」
鳳凰院の目の前で横たわる豪と杏沙は
焼けたように黒い傷を負い虫の息となっていた。
肇も二人に自身の力を全て使って傷を
最小限に抑えたため、疲れ果てていた。
葵は鳳凰院の肩を叩いて
もう少し回復を待ってから改めて事情を聞くよう促した。