第二百七十七話 「信念を曲げない修羅な道」
放送室にいた高坂は
自分自身が生徒会から
このバーチャル空間を誇示する機会に
何らかの報復を受けることは
鳳凰院透華の元で一番弟子として在籍していただけに察していた。
ある日の放課後、
クラスで生徒会秘書の肇と二人きりになった時のこと
「高坂、気付いているんだろう。
うちの勾玉の力、会長の力を。」
「心配してくれてるの。珍しいわね。
ええ、それは嫌と言うほど分かってるわよ。」
「ならば戻ってこい。まだ間に合う。俺からも伝えてやる。」
「それは無理ね。
あなたはまだ透華さんの恐ろしさを分かってない。
それもこれもあの勾玉のせい。
私は美名城先輩から教わったの。何があっても信念は曲げないわ。」
「その美名城先輩は生徒会のメンバーとしているんだぞ?」
「それはあなたたちがそうさせてるからでしょ。
肇、誰かを犠牲にして得た力に誰かを救う力はないわ。
本当に海満を守りたいなら透華さんを会長から降ろすしかないのよ。」
この時、肇は生徒会室で副会長の葵が同じようなことを
言って会長を不機嫌にさせていた時のことを思い出していた。
「なるほど。よく分かった。お前は修羅の道を選ぶということだな。」
己自身を落ち着かせるように
眼鏡をカチッと上に上げてその場を後にする肇。
この時から覚悟は決まっていた。
これだけの火事、いや火災は普通ではありえない。
それにこれほどまでの禍々しいバーチャルリアリティの力は
間違いなく透華さんが勾玉を使った時のもの。
誰も私への報復に巻き込まれなく良かった。
高坂のいる放送室は既に出られないようになっていた。
火以外のものは通さないように設定された
強力なシールドが放送室を包囲していた。
無論高坂は気付いている。
体育祭で赤組をまとめ上げたリーダー
モテ伝説の一つを持つ
気高き女子高生 高坂あかね
待ち受けるのは
生徒会による報復
私は見せしめになるのね。
力のない者が生徒会に従わないと報復に合うのだと・・・
この私のように・・・・
高坂は泣いていた。
美名城先輩、八千草先輩・・・
ごめんなさい。私、何の役にも立てなくて・・・
先輩たちに憧れて先輩たちの後を
ずっとこの先も追いかけて行きたかったです。
先輩たちが目指す・・・バーチャル化の自由な海満を・・・・
火の手は放送室にたどり着く。
灼熱地獄によって意識が朦朧とする中
今にも意識が飛びそうになっている中
高坂は最後の抵抗として
マイクの電源スイッチを押した。