第二百七十六話 「救出された生徒」
「バーラン?B以上??」
菊池たちにとって初めて聞くワードだったが、
これから助けようとしていることには同じ気持ちでいた。
「到底、この火がバーチャルによるものとは考えにくいが
他の誰でもない八千草先輩の言葉だ!
俺たちも賛同するぞ!いいか翔殿?」
「当然だ!!」
孝也の言葉にみんなが頷いた。
すると再び
「玄関前で倒れていた男子生徒ですが、
たった今、救出されました!!」
放送が入った。
「やったーーー!!!」
と歓喜が起きるグラウンド。
放送に驚く美悠と孝也たち。
一体誰が・・・・
この火の海の中に入っていった生徒はいないはず・・・
すると八千草咲苗がグラウンドから走ってきた。
「みんな!!」
「早苗ちゃん大丈夫だった?」
「うん、私は大丈夫。みんなも大丈夫そうだね。」
「うん、みんな大丈夫だよ。」
「そういえば、タロちゃん見かけてない?」
「え?早苗ちゃんと一緒じゃなかったの?」
「それがまだ見かけてなくて!グラウンドにはいないみたいだし。」
「ええーーー!!!」
孝也たちはてっきり太郎は八千草と一緒に行動している
ものだと勝手に思い込んでいた。
「タロちゃんがいないって、まさか倒れてた男子生徒って・・・」
これを聞いた駿、孝也、菊池、翔、八千草姉妹の
焦りが冷や汗となって頬を滴っていく。
「タロちゃんは・・・この火の海の中に!?」
誰もがためらうほどの火の海は
見るものに心までむしばむほどの恐怖を与えていく。
美悠も救出に向かいたいが、
みんなが無事に救出できるイメージが湧かない。
どうすれば・・・・
すると
玄関前で倒れていた男子生徒が運ばれてきた。
「おおおー大丈夫かーー!?」
「水を持ってこーい!!」
水をかけられた男子生徒は
「おい大丈夫か?意識はあるか?」
「ああ」
「何があった?」
「なんだ、俺、生きてるのか・・・」
「おう、ほんとに無事で良かった!!
何があったのか教えてくれ?」
友人が話を聞こうと伺うと
「逃げるときに階段から転倒しちまってな。
そこで足を痛めちまってまったく動けないでいたんだ。」
「ああ」
「足も動かなくて、火は見たことないくらいに
勢いよく燃え上がって、
ああ、もうダメかと思ったら放送がうっすらと聞こえてきて
そしたら誰かが俺を担いでくれて、
俺は暑さで気絶しちまったようだけど
助け出されたんだ。」
「そうだったのか!!本当に良かった!!」
救出された生徒に涙ながらに寄り添う友人の生徒の
光景は周りにいる者たちに感動を与えていた。
「パチパチパチ」
拍手が起きた。
駿は
誰かが助けたってことは、
まだ高坂先輩とその誰かは向こう側にいるってこと。
一体何が起きているんだ?
高坂先輩は本当に大丈夫なのか・・・
タロちゃんはどこにいるんだ・・・・