第二百六十八話 「気がかりなこと」
「八千草姉さん、ちょっとお聞きしたいことが・・・」
部屋を出たところで太八千草美悠を太郎が呼び止める。
「うん、なに?」
「ちょっとここでは・・・」
その様子を見ていた菊池と八千草
「何だろうね?」
「う~ん・・・」
バディの太郎が姉と二人きりで話すのは
自分の家に来たときと合わせて二度目。
何だろう・・・
二人の話が気になる八千草をよそに
「どうしたのタロちゃん?」
「先ほど校舎前で
生徒会長と美名城先輩もそうでしたが、
それ以上に高坂先輩に対して
生徒会長がとても威圧的だったことが
気になりまして・・・」
タロちゃん、
私の隣でただ立ってたわけじゃなかったのね。
「タロちゃんだから教えてあげる。
もちろんこれも夏帆の件と一緒で他言無用よ。」
「はい!」
「実はね、あかねちゃんは生徒会のメンバーだったの。
詳しくは今も生徒会の一人なんだけどね。」
「そうだったんですね・・・
まぁ、あの場にいたときから
そんな気も薄々していましたが。」
「あら、タロちゃんにしては珍しく察しがいいのね。」
タロちゃんにしてはは余計だろ・・・
「会長の透華はあかねちゃんのことを
後輩の中でも特に可愛がっていてね。
でも透華の場合は従順な後輩として可愛がっていて
一方の夏帆はあかねちゃんの人柄を可愛がっていたってわけ。」
「なるほど、可愛がり方にも色々あるんですね。」
「そうね。
気付けば夏帆と行動を共にすることが増えていったの。
その時から少しずつ透華はあかねちゃんに対する当たりが強くなって、
海外遠征も夏帆と一緒に残ることを選んだもんだから
透華にとってはおそらく」
「恩知らずの役立たずくらいに思っているんですかね?」
「・・・ええ、そんなところでしょうね」
「いや~、
美名城先輩の一件と言い
高坂先輩の一件と言い、恐ろしい会長さんだな~。
用心しよっと!!」
「ふふ」
生徒会長の話をいくら聞いても
深刻にならない気楽な太郎のことが
とても可愛らしく見えていた美悠に
「高坂先輩のこと教えていただきありがとうございました。
すっきりしました。
俺には八千草姉さんが一番の頼りです。
約束は必ず守りますので、今後ともよろしくお願いします。」
「うん、ピンチの時は私の側にいて助けてね♪」
「おいっす!」
太郎が部屋から出て、
廊下を歩いて行く後ろ姿を眺めながら
タロちゃん
あなたは一体
・・・・
ちゃんと用心するのよ。
私の側を離れないでね。