第二百六十二話 「時が来たる」
次々と停まったタクシーから
出てくる海満の制服を着た六名の生徒たち。
「こちら実況席。
まさか、うちの制服を着た彼らが
美名城先輩たちの言っていたかれ」
太郎の実況途中で
きゃあああああーーーー
と悲鳴、
ではなく歓喜が起きた。
「あれは間違いなさそうだな。
まるでアイドルだ。」
「タロちゃんタロちゃん、
急にトーンダウンしすぎだって!」
「そう言われてもな・・・」
実況席から様子を見守る中
美名城が
「帰ってきたのね。おかえり。」
「夏帆が出迎えてくれるなんて
とても光栄だわ!!ただいま。」
タクシーから降りてきた一人の女子が
美名城と話をしていると
「ちょちょっと、私たちのこと忘れてない?
とうとう顔を出したわね。私たちのこと覚えてるでしょ?」
「え、私に話しかけてるの?
あなたたちのことなんて私知りませんわよ!!」
堂々と言い切ったこの女子こそ
元三大美女
現海満生徒会会長
鳳凰院透華である。
「それがあなたたち悪魔の答えね」
「悪魔?誰が悪魔ですって?
あんたたち一体どこの誰よ?どうせ私たちのおかげで
安全に高校生活過ごせてるんでしょ?」
「会長、彼女らは隣の街にある海満東高校の生徒たちです。」
「東?そんな高校あったのね。
やっぱり私たちに守られているじゃない?
ほんと図々しいわよ。」
「なるほど、悪魔は悪魔でも、くそ悪魔な生徒会だったようね。
いいわ、今から援軍を呼ぶから。」
待機させていた海満東高校の生徒たちに
援軍として加勢させるための信号を
空高々と打ち上げる。
「こちら実況席。
ただいま、お昼に花火が舞いました。きれいですね。」
「タロちゃんタロちゃん、あれは花火じゃないよ。」
「え?違うの?」
「これから援軍が来るらしい。どうする?
やばいことになってきたね。」
「盛り上がって参りましたね!!」
「タロちゃん呑気過ぎ~~」
・・・・
一向に海満東の援軍がやってこない。
すると、先ほど鳳凰院透華に
高校名を伝えた彼が
「あ、もしかして援軍って先ほど
下で集まっていた生徒たちのことですか?
その人たちならここには来られませんよ。」
「え?どういうこと?
一体何したの!?」
「何したもなにも
さっきここに来るまでに変な気配を察知いたしましたので
本校の敷地、強いては十メートル以内にはうちの生徒以外
入ってこられないよう念のためシールドを張っておきました。」
「シ、シールド・・・!?」
その頃海満東の生徒たちは
目に見えないシールドによって
まったく加勢に行けないでいた。
「いったいどうなってんだ!!!」
「つまり、あなた方は
自ら敵地に足を運び、自ら敵に包囲された
ということになります。どうしますか?
我々をコケにした罰はを受ける覚悟はよろしいですか!!」
そう、この冷徹で眼鏡をかけた男子こそ
海満生徒会会長秘書
九条肇である。
「そん・・な・・・」
膝から崩れる海満東の生徒たち
それを間近で見ている美名城だが
動こうとしない。
太郎と駿は美名城の異変を感じていた。