第二百五十九話 「伺った人と伺ったお家」
「まず、俺たちは思い切ってある人にこの話を聞いたんだ。」
「ある人?」
「八千草さんのお姉さんだ!」
太郎の一言に
「え?」
と静まり返る孝也、駿、菊池と翔の四人。
すると孝也が
「なぬ、八千草殿のお姉様だと?!
お姉様はあの時あそこにいた一人ではないか。」
「ああ、そうだ。
俺たちがこうして情報収集するきっかけの渦中にいた人だ。」
「全て話したのか?」
「ああ、話した」
「それでは美名城先輩たちにもいずれバレてしまうんだぞ!」
「いや、それはない。
その点についてはお姉さんとしっかりと約束をしてきた。」
「約束をしたと言ってもだな。何か言っていたか?」
「いいや、頷いていただけだ」
八千草さんのお姉さんに話を聞いたことに
驚く他のバディたちだったが、
話した内容、聞いた内容も気になる一方で
そんな大事な話をどこでいつしたのかが気になっていた。
「タロ氏、一体いつどこで
八千草殿のお姉さんに話を聞いたのだ?」
太郎が答えようとすると、
「それはね、先週の日曜日に
私の家で話をしたのよ。」
と八千草が先に答えた。
孝也、いや、みんなが
もしかしたらと頭の片隅によぎったことが
現実となった瞬間だった。
「何?八千草家でお話を?
ということはタロ氏は八千草家に一人で
この日曜日お邪魔したということか?」
「まぁ、そういうことになるね。」
孝也は羨ましかった。八千草さんのお家といえば・・・
何故平民のタロ氏なんかが・・・・
「えーー、いいな~!!
八千草さんのお家と言えばまさに名家♪
そんな誰もが知る名家にお招きされるなんて
滅多にないよタロちゃん!!」
菊池の言葉に駿や翔も頷いていた。
太郎にとっては八千草家にお邪魔することが一番の目的
ではなかったため、自慢することもなく、淡々としていた。
ただ、やはりなんと言ってもあのお家は
太郎の中でも大きなインパクトが頭の中に鮮明に残っていた。
先を越されたことに落ち込む孝也をよそに
菊池は
「え、タロちゃん緊張しなかったの?」
と聞くと、
「それは始めは緊張したよ!!
あまりにもでかい門に萎縮しちゃってたからね。」
「やっぱりそうだよね」
すると太郎は八千草の方をチラッと見て
「でも誰かさんのおかげで緊張感はすぐに解消されたんだ。
それにお姉さんに時間を取ってもらって話を聞くことができたんだ。」
と笑顔で話をした。
この時、八千草も笑顔だったが、完全な愛想笑いだった。
「タロちゃん、覚えときなさい!!」
八千草の心の声はこの時太郎にはっきりと届いていた。
「孝也、大丈夫?」
「いや、大丈夫じゃない!」
孝也の『お家にお邪魔する』は
何かいかがわしいことと勘違いしているようだったが、
そこはいつものスルーで
「じゃあ、さっそくだけど、
八千草さんのお家でお姉さんから聞いた話を教えてくれる?」
と菊池が気を取り直して太郎に聞いた内容を問う。