第二百二十七話 「僕にとってのMVP」
「やっと正直になったわね。もう両手を下ろしていいわよ。
まぁ、あなたみたいなどうしようもないボーイは
嫌いではないから人生の先輩として知恵を貸してあげましょ。」
「どうしようもないボーイ?」
自分を指さして聞いた太郎。
それに坂本さんは迷いなく頷いた。
そして
「妹尾先生、マスク一枚くれる?」
結果、
太郎はマスクを妹尾先生からもらい、
サングラス、麦わら帽子、作業着を
坂本さんから借りて変身し、
堂々とテント下で休んでいるのだった。
八千草の違和感は正しかった。
そして真実に考察が行き届いた駿は
テント下でのまさかな光景にも
なぜか落ち着いていられた。
「タロちゃん、すごい!!
タロちゃんは僕のことを
よく褒めてくれるけど、
僕がもし審査員だったら
体育祭のMVPは間違いなくタロちゃんだよ(笑)」
なぜか太郎にことごとく関心させられる駿だった。
「どうしてあんな大胆なことを
佐藤君に伝えたんですか?」
妹尾先生が坂本さんに尋ねると
「彼がどれだけ肝の据わった者か試したのよ。
でもまさか五十歳差の私に変身するだなんてほんと驚きよ!!!」
「本当ですね!!」
保健室に笑いを提供した太郎だった。