第二百二十六話 「欺けないお方」
そう、そのまさかである。
太郎は
暑さに耐えられず保健室を訪れていた。
「あの~妹尾先生」
「あら、どうしたの佐藤君」
「どうやら熱中症みたいで
氷もらえませんか?」
「え?大丈夫?
頭クラクラするとかかな?」
「クラクラは体育祭が始まる前からしています」
「あら、それは氷だけじゃなくて
ここで休んでいきなさい」
「いや、それは大丈夫です。
とりあえず氷だけもらえれば」
すると保健室で
妹尾先生と世間話をしていた事務の坂本さんは
長年の経験から見抜いていた。
「佐藤君っていったっけ?
あなた、それ、仮病でしょ。」
「いやいやいやいや、何ですか急に!?まさか~」
坂本さんをじっと見つめる太郎
坂本さんの瞳が太郎に訴えかけている。
太郎にとって気まずい気まずい雰囲気が流れていく・・・
坂本さんは
「本当に熱中症の人はそんなに
慌てるほど元気も出ないものよ。」
「な、な、なんですと??」
坂本さんの瞳をじっと見つめる・・・
そして気付く!
やばい人がいる!!!
優しい妹尾先生は
「そんな、まさかね。辛いんだよね?」
と心配してくれていた。
しかし、事務の坂本さんを欺くことはできない。
目が合って、瞳の声を聞いて
そう感じてしまった太郎は正直に
「妹尾先生、ごめんなさい。
ただ、暑いのが苦手なのは確かです。」
と熱中症ではないことを認め、両手を上げると
坂本さんがある意外な提案をする。