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第二百三話 「同じ立場にない一言」
次の黄組のパフォーマンスまで
しばしの休憩が入った。
太郎はその間に
トイレ休憩に出ていた。
トイレからスタンドに戻る際、
衣装を着たままの高坂と会う。
「私のパフォーマンスちゃんと観た?」
「はい、観ました!!」
「どうだった?」
「釘付けでした!!」
「そう♪
青組のパフォーマンスも楽しみにしてるからね。」
「はい!」
高坂の「どうだった?」に対して
太郎の中では、感動したこと、興奮したこと
そして、高坂がここまで見えないところで
苦労して赤組を統率してきたことと数々の想いが駆け巡らせていた。
ただ、それを伝える資格が俺にはない。
まだ青組はパフォーマンスを披露していない。
すでにパフォーマンスを終えた高坂と同じ立場にない。
気の緩みは足を引っ張ってしまう恐れがあるからな。
ただ、俺の役割というのは、あれなんだけどな・・・
俺が今言えることはあの一言だけなんだ。
パフォーマンス後、高坂に
「釘付けになった」と言ってもらえるように。