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第百九十六話 「三つ巴の結末」
「駿、お前が何に緊張しているか俺にはよく分かる。」
「え?」
「アンカーでこけたらどうしようって思ってるんだろう?」
「あ、いや、ちがっ」
「任しとけ、そんなときはな、コロコロと転がればいい。
こけたんじゃない。転がったんだ。なんちゃってな!」
「コロがって」
スタンドからどよめきが起きる。
他の二人が派手に転んだのとは対照的に
駿は、転倒の瞬間に身を丸くして一回転し、
勢いが止まることを最小限に抑えて立ち上がった。
他二人もすぐさまその場で立ち上がるが
時すでに遅し。
「青組、ゴーーール♪」
駿は両手を挙げてゴールテープを切った。
転倒する瞬間、
見事転がって受け身をとり
アンカーとして勝利をもぎとった。
この事態を想定していたかしていなかったか
の差が勝敗を分けるものとなる。
青組のスタンドは大盛り上がりを見せる。
放送の八千草美悠も
「なんというハプニングでしょう!
しかし、そんなハプニングにも
冷静に受け身をとり、
一番にゴールした駿くんは海満で最速の男と言えるでしょう。」
駿への注目度は100mで一位をとった時から
うなぎのぼりで上がっていく。