第十二話 「服従関係」
「孝也・・・いや、将軍殿!!」
「どうした・・・」
「自分でモテたいプライドだけは将軍って正気か?」
「太郎氏、やはりまだまだ平民であるな。
男たるもの、女子にモテたいという想いは誰でも持っておろう。
もし仮にもその想いがないというものは、
断じて
男では・・・ない 」
「そんな断言しなくても・・・
駿はあるのか、その想いとやらは」
「いや~、俺は・・・」
駿が口を開こうとすると孝也が
「当然であろう。駿氏はその想いを持っていながらも、
あえてスルーしているのである。その余裕が侍なのだ。」
そうだった・・・太郎は駿が侍であったことを忘れていた。
一方、苦笑いする駿を見て、
将軍と侍の絶対服従的な関係性を垣間見た気もしていた。
「将軍殿。飛び込み3人組では、勝敗どころか、
歴史に汚点まで残すかたちとなってしまいます。
何かセンスを感じる強そうな名前が必要じゃないですかね。」
と佐藤太郎、平民は言った。
平成でなければ、
現実的に平民が将軍様に直々ものを申すなど
言語道断
処せられていたに違いない。
孝也は真剣に将軍殿をやっている(演じる)。
気付けばいろいろと面倒なことになるが、
気付かない頭の緩い将軍殿で良かったと俺、平民は思った。
ちなみに侍の駿は、
孝也に俺が申している姿を
ニヤニヤして見ていた。
さっきまで苦笑いしていた奴が
ニヤニヤしているということは、
こいつもこいつで思うところがありながら、
将軍に告げ口しなかったのだろう。
忠実さのかけらもない奴である。
平民的には都合がいいが、
何を企んでいるのか読めないのも事実だ。