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第百五十一話 「移りゆくまなざし」
お店の端っこの黒い棚であった。
「えー、
どうしてあんな目立たないところに飾ってあるんですか?」
菊池がふと聞くと
「そもそも俺は飾る気なんかなかったんだけど
夏帆がどうしても飾った方がいいって言うから
せめて目立たないように置いてるんだ。」
「なんか私のせいみたいになってるけど、
海満で全国優勝できる生徒なんてそう滅多にいなかいから
当時は有名人だったのよ。家に取材とかも来てたもんね。」
菊池が
「美名城先輩も海満高校では充分有名人ですけど
その先輩が言うんだから、ほんとにすごかったんですね。」
夏海は
「いやいや、それほどでも・・・
ある・・かもしれないけど
もう昔の話だから。
それに違う意味での方が有名だったからな。
まぁ、何はともあれ、これからは君たちの番だよ。」
「違う意味で??」
一つの疑問を残したものの、
ただの店長として見ていた眼差しはいつしか
尊敬の眼差しへと移り変わっていた。