152/301
第百四十四話 「その名を聞くまで」
「あの、ここでずっとやってますので、
是非、また来てください。閉店営業行いますので。」
「そうね、またここには来る気がするわ。
そのときはおいしいあなたの海鮮料理をいただくわね。
今日は閉店営業ありがとうございました。またね。」
「また・・ね」
夏海は最後に必ず聞こうとしていた名前を
聞き忘れたことにその翌日に気付く。
名前を聞き忘れるほどに
この閉店営業は夢のような、
幻のような、
もう二度と訪れることのないような時間だった・・・
幻だったのは時間だったのか、
それとも彼女だったのか、
夏海は魅惑の彼女が言った
自身の使命と向き合って
海満のカフェを営業する。
いつでも閉店営業ができるように
彼女の名を聞くそのときまで