151/301
第百四十三話 「あなたは私じゃない」
「・・・え?」
「ずいぶん長居しちゃったしね。
お酒までいただいちゃって。」
「いやいや、
その、まだ、お姉さんに何があったのか聞いてないですから」
「あ、その件ね、
あなたになら聞いてもらおうかなって
思ってけど、色々話せたからすっきりしちゃった。
私のことばかりでごめんね。」
「あ、いえ」
「だから最後にあなたの話を聞く前に
あなたの話をさせてもらうわね」
「え・・・」
「あなたは自分で朝早くから魚を獲って
夜遅くまでお店を開いてる。すべて自分だけでやってる
みたいだけど、それはやめた方がいいわ。」
「え、なぜですか?
お姉さんだって、」
夏海が彼女のことを話そうとすると
「私は普通じゃないからね。
でもあなたは私みたいになってはいけないわ。
あなたはこんなに美味しいおつまみも作れるんだし、
何より、聞き上手じゃない。」
「あ、ありがとうございます」
「あなた自身の使命と
しっかり向き合いなさい。
失ってからでは遅いのよ。」
「失ってからでは・・遅い・・・」