第百三十七話 「閉店営業開始」
「何かあったんですか?」
「そうね、すごく私的な話だけど聞いてくれるの?」
「はい、そのための閉店営業です」
二人の長い夜はここから始まる。
「ありがとうございます。
私、どんな仕事しているように見える?」
「そうですね・・・
朝早く海辺を歩いてことからそれなりに融通の利く仕事・・・
ネイルもされていますし、服装もファッション的というか
オシャレしているように見えるので、自営の美容師とかでしょうか?」
「おーーー!
店長さん、すごい洞察力してるわね♪」
「じゃあ、」
「けど、ハズレ!!」
「ガクッ」
「こう見えて私、科学者なの。」
「え?
・・・科学者ですか?」
「信じられないでしょ?」
「はい、現段階では一ミリも信じられません」
「ふふふ、そうよね。
朝から海辺をうろついて、
こんな深夜にお酒を求めて出歩いてるもんね。」
「いや~
おっしゃるとおりですね」
「あら、店長さんなかなか言うじゃない」
「すみません。科学者ってあまりにも特殊な仕事な気がして。
こんな田舎に科学者が働けそうな場所があるようにも思えないし。」
「特殊じゃないわ、普通よふつう。
朝ご飯はパンとヨーグルトくらい普通よ。」
「え?あ、ちょっと
その例えからして、やっぱり普通じゃないですね。」
「朝は、パンじゃないのー?」
「朝は、やっぱり白飯とあさり汁と魚ですね」
「それこそ普通じゃないでしょ!」
二人の笑いの絶えない話が
閉店した店内を明るく灯していく。