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第百九話 「漕ぐこと十五分」
「ここは?」
自転車のブレーキを握りしめ、
あるお店の前で立ち止まった孝也が
この言葉を発するまで少しの時間を遡る。
美名城が太郎とともに
お昼に行くこととなったが、
学食に向かおうとした菊池らに
「みんな、ほら」
と駐輪場を指さしして、
先輩命令で
自転車に乗ることになった五人は
美名城の後をついて行く。
美名城はと言うと
太郎のリアキャリアに
「よいしょ!」と乗り、
「しゅぱーつ♪」と出発の合図を出した。
菊池が
「あの、どこに行くんですか?」
と尋ねると
「それはついてからのお楽しみ♪」
とじらしていた。
学校を出発して
海沿いの道なりを自転車で漕ぐこと十五分
ついたのは
海が目の前にある
外観は真っ赤のサーフィンボードに
ヨットの帆が飾られた
いかにも海人が経営していそうなお店。
「ここは?」